[SL01-01] 小児心臓外科領域における再生血管移植医療の現状
さまざまな種類の細胞が血管再生治療に用いられるが、筆者は骨髄単核球を生体吸収性ポリマーに播種したTissue-engineered人工血管を使用した臨床治験を行っている。マウスモデルを用いて播種された骨髄単核球の定量を行った結果、約24時間でscaffold上の細胞は大部分が消失することが明らかとなった。この結果から、播種された細胞自体が分化し組織形成やリモデリングに寄与している可能性は低く、たとえそのような細胞があったとしても、その数は非常に少ないと考えられる。むしろ、これら播種された細胞は、移植後、急性期の血栓形成を抑制し、生理活性物質を放出し、脈管形成や組織形成に貢献していると考えられる。マウスモデルを用いた下大静脈置換実験では、骨髄単核球の播種により、移植後のTissue-engineered人工血管の狭窄・閉塞が減少し、より良好な組織形成に貢献することが示された。また、最終的にどのような細胞源が移植後のTissue-engineered人工血管での組織形成に関与するかについてもマウスモデルで検討を行った。雄性マウスに雌性マウスから採取した骨髄を移植し、Y染色体プローブを用いて細胞を追跡し、骨髄細胞の動態を観察した。scaffold内の炎症反応を誘起するマクロファージは骨髄細胞由来であることが示されたが、新生血管の内皮細胞や平滑筋細胞は50%以上が吻合部からの進展で構成されており、骨髄細胞から分化したと思われる内皮細胞や平滑筋細胞の生着はほとんどみられなかった。この結果から、骨髄細胞を起源とする内皮前駆細胞が、Tissue-engineered人工血管移植後の血管リモデリングに関与する可能性が低いことが示された。現在もFDA承認下の臨床治験(extracardiac Fontan conduit)が進行中である。そのステップは、①全身麻酔導入後、腸骨より穿刺針にて骨髄を採取する。②採取した骨髄から、密度勾配法により単核球を分離し、それを生体吸収性ポリマーからなる人工血管に播種する。③手術開始後、 癒着剥離や人工心肺の準備をしている間に骨髄単核球を移植した人工血管を患者血清とともに2時間培養する。今後は細胞播種をしない第二世代のTissue-engineered人工血管群の臨床研究も計画している。