第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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教育セミナー(多領域専門職部門)

教育セミナー1(多領域専門職部門)
静注用エポプロステノールの導入と管理のコツ

Fri. Jul 17, 2015 2:40 PM - 3:25 PM 第7会場 (1F シリウス)

座長:
岩朝 徹 (国立循環器病センター)
松﨑 陽子 (岡山大学病院)

TRES1-01~TRES1-03

[TRES01-01] 肺動脈性肺高血圧症(PAH)の病態とエポプロステノール療法の実際

中山 智孝 (東邦大学医療センター大森病院 小児科)

PAHは進行性に肺細小動脈の器質的・機能的閉塞を呈し肺動脈圧が高くなるにつれ、拡大した右室により左室は狭小化し、心拍出量や冠循環が減少する。従来は極めて予後不良だったが、近年の治療薬開発の恩恵を受け生命予後は大幅に改善された。その中で最強かつ推奨度の高い薬剤がエポプロステノールである。血管拡張作用とともに血小板凝集抑制・血管平滑筋増殖抑制作用を有する。急性肺血管反応性が乏しくても慢性効果が得られることが多いが、その機序は十分解明されていない。重症PAHに対し適応されるが、遺伝性(家族性)や進行が早い症例では後手にならぬよう開始時期を検討すべきである。 半減期が短いため持続静脈内投与を必要とし、溶解後のpHがアルカリ性で血管刺激性があるため中心静脈カテーテル留置が不可欠となる。低用量(1~2ng/kg/分)から開始し、副作用や忍容性に注意しながら2~4週間隔で1ng/kg/分ずつ増量する。上限は定められていないが、開始後2,3年で安定維持量(20~30ng/kg/分)に達することが多い。重症例ほど体血管拡張による心拍出量・静脈還流増加に対する肺血管拡張反応が弱く、肺動脈圧上昇や右心不全増悪をきたすことがあり、急速な増量は避け、カテコラミン(ドブタミン、ドパミン等)やPDE-III阻害薬(ミルリノン、オルプリノン等)の併用を考慮する。過度な水分制限や利尿薬の過量投与は心拍出量低下を招くため、水分バランスに配慮する。副作用には顎痛、下痢、皮膚の紅潮などがある。用量依存性があり、減量ないし増量を見合わせることで軽快することがある。思春期以降ではBasedow病など甲状腺機能異常の併発にも注意する。菌血症や皮下トンネル感染のほか、留置カテーテルの脱落、閉塞、損傷などに注意する。薬剤投与が長時間中断した場合にはリバウンド現象(急性増悪)の危険があるため、すみやかに末梢静脈を確保して薬剤注入を再開する必要があり、地域医療連携が重要である。