第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

教育講演

教育講演6(EL06)
TBD

2016年7月8日(金) 13:50 〜 14:35 第C会場 (オーロラ ウェスト)

座長:
鮎沢 衛(日本大学医学部附属板橋病院 小児科)

EL06-01

13:50 〜 14:35

[EL06-01] 子どもの未来の健康のために~科学的根拠に基づく食育実践の可能性~

森 真理 (武庫川女子大学 国際健康開発研究所)

 食育基本法が世界に先駆けて平成17年6月に施行された日本では、栄養教諭制度の施行や保育所保育指針に食育を盛り込むなど、子ども達の健全な発育のために食育によるあらゆる手段を講じています。
 しかし、現実はどうでしょうか。
私たちの研究所では、農水省の食育補助金など様々な研究費で、子ども達への食育をテーマとした研究を実施して参りました。まずは若い世代の健康状態を把握するため、「食育健診」と銘打って、5年間にわたり1000名以上の男女中高生の健康診断を行いました。この食育健診では、健診結果で気になる点があった場合に栄養アドバイスを行い、それを克服するという内容で実施し、これまで若い世代の健康状態の現状や痩せの問題、低出生体重児の将来の健康リスクの可能性から妊婦の食習慣の問題などについて検討し、その成果を子ども達の食育に生かせるように努めて参りました。そして、現在の食べ方の問題が、本人の将来の健康だけでなく、後世の健康にも影響を与える可能性がある事も広く伝える事に努めています。
正しい情報を伝える事で、現在の食べ方の問題点に気付き、自ら改善できるような食育の実践が理想と考え、これまで様々なエビデンスを構築するため、食育介入や栄養介入研究を子ども達の協力を得ながら実践して参りました。
今回は、その例をいくつかお話しさせて頂き、それらの介入研究が子ども達の栄養改善や健康リスクの軽減に繋がっている可能性があるか否かのご意見を伺うと共に、特に循環器疾患関連では、子どもの頃からの塩分摂取が、成人後の血圧の上昇に影響を与えるとの報告から、子ども達への適塩指導の食育の実践例などの報告もさせて頂きます。
 食育基本法の第九条から十三条では、国や地方公共団体、教育関係者等及び農林漁業者や食品関連事業者、そして国民まで、「基本的理念に則り、あらゆるところで食育の推進に寄与することが責務」とうたわれ、国民に至っては、「生涯にわたり健全な食生活の実現に自ら努める」と述べられています。将来の健康維持のために、若い世代からの食育は重要です。しかし、実践するだけの食育ではなく、科学的根拠に基づいた有効な食育が広まる事を期待し、今後も食育介入によるエビデンスの構築に貢献しようと考えています。