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[I-OR101-02] プロスタグランディン長期投与が動脈管に及ぼす組織的変化の検討
キーワード:位相差CT、動脈管、プロスタグランディンE1
[背景]本邦では比較的日常的にPGE1製剤の長期投与が行われているが,同製剤の長期投与が動脈管組織に与える影響は明らかでない。SPring-8に設置されている位相差X線CTは約12μmの空間分解能に加え、軟部組織の微細な密度差を明瞭に描出することが可能である。今回我々は本装置で撮像したCT画像に加え、免疫染色を含む病理標本を作成し,PGE1が動脈管に及ぼす影響を検討した。 [方法]当院及び協力施設において手術時に摘出したPGE1使用下の動脈管6検体を対象とした。動脈管は摘出後直ちに10%ホルマリンで固定し位相差X線CTで撮像。動脈管の最大中・内膜厚,中膜の密度を計測。その後長軸方向で動脈管の組織切片を作成。HEおよびEVG染色を行い,動脈管中膜における弾性線維及び平滑筋の分布を観察,定量化した。又,免疫染色において動脈管に特異的なTFAP2β及びEP4の発現を定量評価し,PGE1の投与期間及び量が各々に与える影響を検討した。[結果]lipoPGE1の投与期間は49 (20-123)日,平均投与量4.5(1.6-5.5)ng/kg/minであった。CT所見において,PGE1の投与期間及び量と,動脈管の形態変化に明らか相関を認めなかった。EVG染色にて,PGE1の長期投与例では弾性線維が規則的に層状配列しているのに対し,短期投与例においてはその存在は疎で,配列も不規則であった。PGE1の投与期間と弾性線維量の間には正の相関(r=0.88)を,平滑筋量との間に負の相関(r=-0.72)を認めた。又,PGE1投与量と EP4発現量に正の相関(r=0.71)を認めた。 [結論]PGE1の投与期間及び投与量は,動脈管中膜の組織的変化,特に弾性線維の増加及び平滑筋量の減少に影響を与える事が示唆された。しかしながらその機序は不明で,EP4発現の増加との関連性に対する検討が必要である。