第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

一般心臓病学

一般口演1-01(I-OR101)
一般心臓病学

2016年7月6日(水) 08:40 〜 09:30 第C会場 (オーロラ ウェスト)

座長:
曽我 恭司(昭和大学横浜市北部病院 こどもセンター)

I-OR101-01~I-OR101-05

08:40 〜 09:30

[I-OR101-03] Hunter症候群の心病変に対する酵素補充療法の効果

蝦名 冴1,3, 安河内 聰2, 瀧聞 浄宏2, 武井 黄太2, 田澤 星一2, 齋川 祐子1,3, 柴田 綾3, 日高 惠似子3 (1.長野県立こども病院 エコーセンター, 2.長野県立こども病院 小児循環器科, 3.長野県立こども病院 臨床検査科)

キーワード:Hunter症候群、酵素補充療法、ムコ多糖症

【背景】Hunter症候群はIduronate-2-sulfataseの欠損によるライソゾーム病で、全身組織にムコ多糖が蓄積し多彩な症状を呈する。2007年よりHunter症候群の酵素補充療法が始まり低身長などには臨床的効果が報告されているが、心病変に対する効果は未だ不明である。【目的】Hunter症候群心病変に対する酵素補充療法の中長期的な効果を検討する。【方法】当院で酵素補充療法中(エラプレース0.5mg/kg/week)のHunter症候群の男児4名、治療開始時の年齢は中央値11歳(6-18歳)。診療録より身長/体重、心臓超音波検査の弁逆流、左室内腔/左室後壁径、大動脈弁/僧帽弁肥厚の程度、大動脈弁/僧帽弁輪径を計測し、酵素補充療法開始前後での心病変の変化について後方視的に検討した。【結果】観察期間は8年とした。酵素補充療法後には治療開始が18歳と遅かった1例を除く3例で身長/体重の増加率の改善を示した。最も増加した例では身長は治療開始時から5年で28.5cm、体重は22.6kgの増加を認めた。一方心病変への効果としては、左室後壁厚の増悪はなく(治療前平均z-value 0.0:治療後-0.1)、左室拡張末期径の増大はなく(治療前平均z-value 1.0 :治療後0.9)、僧帽弁閉鎖不全は改善傾向を示した(治療前mild-moderate3/4:治療後mild 2/4)。ただし、大動脈弁閉鎖不全と弁尖の肥厚の有意な改善はみられなかった。【考察と結語】Hunter病の心病変に対する酵素補充療法の効果は、観察期間8年では少なくとも臨床的悪化は起こさず、僧帽弁閉鎖不全については改善傾向が見られた。体格的効果より心病変に対する酵素補充療法の効果は、より長期に観察する必要があるがより早期に導入すれば改善することが期待できる。。