08:40 〜 09:30
[I-OR101-05] 神経性食思不振症患者における心機能の検討
キーワード:神経性食思不振症、一回拍出量、心係数
【背景】神経性食思不振症(Anorexia nervosa 以下AN)は多彩な身体機能障害を合併する疾患であり、徐脈や心嚢液貯留といった循環器合併症が認められることがある。重症心不全に至った症例の報告も散見される。AN患者の心機能を検討し、健常者との比較を試みた。【対象・方法】当科で入院加療を行ったAN患者6名(女子5名、男子1名)。これに対し心雑音や心合併症のない川崎病のフォローで当科を受診した9名(女子7名、男子2名)を対照群とした。これら2群に対し心臓超音波検査を行い左室拡張末期径(LVDd)や左室内径短縮率(LVFS)を測定、右室流出路血流のドプラー波形から一回拍出量(以下SV)を算出し、更に心拍出量(CO)や心係数(CI)も算出した。LVDdやSVは体表面積(BSA)で除して体格による補正を行った。【結果】AN群は中央値でそれぞれ、年齢14歳1か月、身長157.3cm、体重32.3kg、BSA 1.24m2、Body Mass Index(BMI)13.6に対し、対照群は11歳10か月、146.1cm、37.5kg、 1.25m2、17.3で、年齢・身長・BMIに有意差を認めた。心拍数は中央値でAN群48.8bpmに対し対象群71.2bpmと有意にAN群は徐脈を呈した。心臓超音波の評価ではLVFSやLVDd/BSAは有意差がなく、SV/BSAはAN群で有意に低かった。これに伴いCOやCI(中央値AN群1.62、対照群3.48)もAN群で有意に低くなった。AN群6例においては発症前からの体重減少率を罹患月数で除した月当たり減少率とCIに強い負の相関を認めた(R2=0.95)【考察】ANでは心拍数のみならずSVが低下していることが明らかになった。LVDd/BSAには差がなく、SV低下の機序については更なる検討を要する。