第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

自律神経・神経体液因子・心肺機能

一般口演1-18(I-OR118)
自律神経・神経体液因子・心肺機能

2016年7月6日(水) 08:50 〜 09:40 第F会場 (シンシア サウス)

座長:
田中 高志(宮城県立こども病院 循環器科)

I-OR118-01~I-OR118-05

08:50 〜 09:40

[I-OR118-03] Fontan循環における甲状腺機能の病態生理

桑田 聖子, 栗嶋 クララ, 簗 明子, 岩本 洋一, 石戸 博隆, 増谷 聡, 先崎 秀明 (埼玉医科大学総合医療センター 小児循環器科)

キーワード:Fontan循環、甲状腺機能、拡張機能

【背景】Fontan循環における高い静脈圧(CVP)と低心拍出(CI)は臓器うっ血をもたらし、甲状腺機能に悪影響をもたらす可能性がある。さらに、甲状腺ホルモンは、心筋細胞に直接作用して心収縮力を増大、あるいは心臓の交感神経、カテコラミンへの感受性を高める作用を有しており、甲状腺機能異常が、Fontan心血管機能調節に関与している可能性もある。今回、Fontan循環動態と甲状腺機能との病態生理学的関連について検証した。【方法】当大学にてfenestrated Fontan術を施行し、follow up のカテーテル検査を行った連続28例中、アミオダロン内服1例を除いた27例を対象とした(検査時の年齢8.0±3.9歳、術後5.22±4.03年)。【結果】TSHのみ軽度高値を示すsubclinical hypothyroidismを9例に認め、TSHはFontan血行動態指標のうちCVPと有意な正の相関を示した(P<0.01、r=0.5)。さらに、subclinical hypothyroidism群では、肝臓のうっ血を示すγGTPが有意に高値を示し (125.6±88.5 vs 61.9±33, P<0.01) 、Fontan静脈鬱滞が甲状腺機能低下に関与している可能性が示唆された。さらに、Subclinical hypothyroidismの群では、実効ホルモンであるfT3(3.1±0.6 vs 3.5±0.5, P<0.01)が有意に低く、fT3はRelaxation Time Constantと有意な負の相関を示し(P=0.03)、CIと正の相関を示した(P=0.04)。【考察】Fontan患者における静脈鬱滞は甲状腺機能低下をもたらし、fT3の低下が、Fontan循環における拡張機能(弛緩能)低下や低心拍出に関与している可能性が示唆された。これらの結果は、甲状腺ホルモン補充が、Fontan循環改善に役立つ可能性を示唆するものであり、今後の検証に値すると思われた。また、BNP、血管機能の指標であるFMD、レニン活性と関係があり、甲状腺機能の異常がFontanの心血管機能に悪影響を及ぼしている可能性が示唆された。