第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

術後遠隔期・合併症・発達2

一般口演1-20(I-OR120)
術後遠隔期・合併症・発達2

2016年7月6日(水) 15:30 〜 16:20 第C会場 (オーロラ ウェスト)

座長:
坂﨑 尚徳(兵庫県立尼崎総合医療センター 小児循環器内科)

I-OR120-01~I-OR120-05

15:30 〜 16:20

[I-OR120-04] 当院でのフォンタン術後、蛋白漏出性胃腸症発症例の臨床結果  一施設として30年の経験

中村 真1, 杉谷 雄一郎1, 倉岡 彩子1, 児玉 祥彦1, 佐川 浩一1, 石川 司朗1, 中野 俊秀2, 角 秀秋2, 牛ノ濱 大也3, 総崎 直樹4 (1.福岡市立こども病院 循環器科, 2.福岡市立こども病院 心臓血管外科, 3.大濠こどもクリニック, 4.福田小児科)

キーワード:蛋白漏出性胃腸症、フォンタン術後、遠隔期合併症

【背景】フォンタン術(F)後遠隔期の重篤な合併症として蛋白漏出性胃腸症(PLE)がある。合併率は概ね5-15%と報告されており、発症後の5年生存率は50%と報告されている(Pundi,2015)。【目的】2014年12月末までに当院でFを実施し、翌年12月末の時点で術後経過が把握できた症例のうちPLEを発症した症例について後方視的に臨床結果を調べた。【方法】当院の単心室DATABASEをもとに後方視的に診療録を調べ、F後例の中でPLEを発症した症例につき検討した。【結果】2014年12月末までにFを実施し術後経過が把握できた569例中17例がPLEを発症。発症率は3%。性別は男性94%、死亡例3例であった。発症年齢は中央値で10.7歳、F後経過4年(中央値)で発症し、発症後5年生存率は81%であった。PLE群と非発症(nonPLE)群とのF後20年生存率はそれぞれ85.6:93.4%であった(Log-rank p<0.05)。診断名は無脾症7例、HLHS6例等が多かった。PLE発症のrisk factorとして男性、HLHS、無脾症、フォンタン術時人工心肺時間、難渋する胸水貯留、術後早期の心カテでのCVP、RpI、EF及びCIなどを変量として多変量解析を行ったので報告する。【考察】当院では、1990年代よりF術式として心外導管によるTCPC術を実施してきたが、これまで文献的に報告されてきたPLE発症率と比較し少ないと考える。これは同術式を実施してきた直後から右心Bypass術後には抗凝固抗血小板療法、心筋保護療法を可能な限り導入し継続してきたこと、右心bypassルートの血流がスムーズになるように器質的狭窄病変を外科的に解除する方針をとってきたこと、術後も定期的なカテーテル検査を行い中心静脈圧の推移を評価し、その際、CVPが高い症例には血管抵抗を下げる治療を加えてきたことなどそれらの要因が相乗効果となり良好はフォンタン循環を維持してこれたものと考えられた。ただ、今後成人移行症例が増え、さらなる長期遠隔期となった場合のF後経過は未知数である。