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[I-OR122-01] 右房容積によるTCPC conversion手術の適応について
キーワード:TCPC conversion、右房容積、手術適応
【背景】術前の右房内血栓や不整脈、長い人工心肺時間はTCPC conversion手術の危険因子となるが、手術時期の明確な基準はない。【目的】TCPC conversion手術前の右房容積を測定し、手術の適応時期について検討する事。【対象・方法】TCPC conversion手術を行った全66人のうち、術前にカテーテル検査で右房容積を測定できた53人(lateral tunnelや術前評価ができていない患者は除く)について診療録から後方視的に検討した。既往Fontan手術は心耳肺動脈吻合型47人、Bjork型6人であった。【結果】死亡例6人(早期死亡4人、遠隔期死亡2人)、術前の右房内血栓は8人、不整脈は30人にみられた。右房容積は右房内血栓(あり:191±73ml/m2 vs なし:103±46ml/m2; p<0.0001)、不整脈(あり:140±64ml/m2 vs なし:85±33ml/m2;p=0.0005)、死亡(あり:204±83ml/m2 vs なし:105±46ml/m2;p<0.0001)で有意差を認めた。ROC曲線を用いた右房内血栓に関する右房容積のoptimal cutoff valueは122ml/m2(AUC0.90;感度100%、特異度72%)、不整脈に関する右房容積のoptimal cutoff valueは106ml/m2(AUC0.80;感度77%、特異度78%)、死亡に関する右房容積のoptimal cutoff valueは140ml/m2(AUC0.89;感度83%、特異度87%)であった。右房容積は術中人工心肺時間と正の相関(r:0.28, p=0.04)を認め、右房拡大あり(110ml/m2以上)と右房拡大なしの2群間で比較すると右房拡大ありで優位にPlt低値(OR:0.85, 95%CI:0.74-0.96,p=0.004)、γGTP高値(OR:1.01, 95%CI:1.00-1.02,p=0.008)、BNP高値(OR:1.02, 95%CI:1.01-1.04,p<0.0001)であった。【結語】TCPC conversion手術前の右房容積拡大は術前の右房内血栓、不整脈の危険因子であり、γGTP高値、Plt低値、人工心肺時間の延長と関連する。今回の結果から、術前の右房容積が110-120ml/m2に至る前にconversionすることが望ましいと考えられ、140ml/m2以上は手術死リスクが高まる。