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[I-OR125-01] デュシェンヌ型筋ジストロフィーの心不全発症機序の解明と新規治療の開発
キーワード:heart failure、DMD、Autophagy
【背景】近年デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の死亡原因のトップが呼吸不全から心不全に移行したが、DMDにおける心不全の発症機序は未だ不明な点が多く、治療法の開発は困難であった。発症機序の一つとしてアポトーシスの関与が2015年に報告されたが断定するには至っていない。【目的】DMDにおける心不全の発症機序を明らかにし、その治療法を開発する。【方法】DMD患者と対照からiPS細胞を作成し、分化させた心筋細胞(iPSC-CM)の形態・機能を比較する。次にイソプロテレノール(Iso)を用いてDMD iPSC-CMの細胞死を評価し、その機序について検討した。またin vivoでも同様の現象を認めるかDMDモデルマウス(mdxマウス)を用い、心機能や心筋組織を評価した。【結果】DMDと対照iPSC-CMで細胞サイズや形態に有意差はなかった。Iso 負荷後にCaspase 3, TUNEL染色を行うもDMDと対照で有意差を認めなかった。一方GFP-mRFP-LC3を用いた実験では、DMD iPSC-CMでIso 負荷後、有意にオートファゴソームが増加した。生後12週~16週のmdxマウスにIsoを0.5mg/kg/day持続投与すると、コントロールマウスと比較して有意に心機能低下を認め、心筋切片の線維化面積は増大した。更にLC3の免疫染色でオートファゴソームが増加しており、オートファジーを抑制するクロロキンを1.2mg/dayで経口投与させたところ、この心機能低下・線維化の増大が明らかに抑制された。【まとめ】DMD患者の心機能低下については、アポトーシスよりもオートファジーの関与より大きいことが示唆された。よってクロロキンは新しい治療法の候補になりうると考えられた。