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[I-OR128-04] ガンマグロブリン不応川崎病に対するインフリキシマブ治療後の神経学的予後
Keywords:インフリキシマブ、神経学的予後、川崎病
【背景】抗TNFαモノクローナル抗体であるインフリキシマブ(IFX)が2015年12月に保険収載された。今後、ガンマグロブリン療法(IVIG)不応川崎病に対してIFXを投与される症例が増大することが予想される。しかし、神経系に対するTNFαの作用として、髄鞘構成成分蛋白の遺伝子発現の調節や髄鞘形成阻害が報告されており、IFX治療については、脱髄性疾患による原病の増悪やリウマチ性疾患での脱髄性疾患発症の可能性が示唆されているためIFX投与後の経過観察は慎重に行う必要がある。【目的】IVIG不応川崎病でIFX治療を施行した小児例における神経学的予後を評価し、髄鞘化および脱髄の有無について検討した。【方法】対象はIFX 5 mg/kg単回投与を受けたIVIG不応川崎病 15例、全例親権者の同意を得た。精神発達評価として知能検査(WISC-IV)を施行し、髄鞘化と脱髄の検索として頭部MRIを施行した。【結果】検査時年齢は全例6歳以上で、IFX投与後1年以上経過していた。冠動脈病変は急性期の拡大を6例に認めたがいずれも退縮した。また、IFX投与時1歳未満の症例が4例含まれていた。治療後の精神運動発達遅滞や神経所見の異常は、全例で認められなかった。WISC-IVを施行した13例(男7例、女6例、検査時6~12歳)では、全検査IQ 104.1±16.8、言語理解 98.7±14.5、知覚推理 108.8±19.4、ワーキングメモリー 100.8±18.3、処理速度 104.4±10.5と明らかな異常はなかった。頭部MRIを施行した14例(男6例、女8例、検査時6~16歳)では、髄鞘化遅延、脱髄所見はなかった。【考察】脳の髄鞘化は2歳までにほぼ完成するとされており、今回の検討から小児へのIFX投与による発達や脱髄性病変への影響はないと考えられた。しかし、このような研究は本研究が初めてであり症例数も少ないことからIFX投与後の神経学的予後に対する大規模な調査が必要であると考えられた。