10:50 〜 11:50
[I-OR204-02] 無脾症候群に対する外科治療成績の向上
キーワード:無脾症候群、総肺還流異常症、肺静脈狭窄
【背景】無脾症の5年生存率は30%から74%と低く、先天性心疾患のうちもっとも予後不良な疾患の一つと考えられている。しかし、単心室症に対する段階的手術や、胎児診断によるハイブリッド治療をともなう計画的治療、あるいは無脾症に多く合併する肺静脈狭窄(PVO)に対するステント治療などによって重症単心室症の治療の様相も変化してきており無脾症の治療成績の向上も期待できる。最近の無脾症の外科治療成績と、予後不良因子について明らかにすることを目的とした。
【対象と方法】2004年より2015年までの間に外科治療をおこなった無脾症63症例を対象とし後方視的に検討した。48例(76%)は胎児診断されていた。すべて機能的単心室例で二心室症例はいなかった。29例(46%)が総肺静脈還流異常症(TAPVD)を合併していた。そのうち17例がPVOを呈していた。新生児期にPVO解除をおこなった症例は11例、第1期手術として体肺動脈シャント手術が行われたのは26例であった。追跡期間は54±44ヶ月であった。Kaplan-Meier生存率曲線を求め、また多重ロジステイック回帰分析をおこなって死亡に対する予測因子を求めた。
【結果】5年生存率は75.9±5.7%であった。多変量解析では治療の年代が死亡の有意なリスク因子であった(p=0.007)。2011年までの44例で13例の死亡(30%)であったが、2012年以降の19例中、死亡は1例(5%)のみであった。54例(86%)が両方向性グレン手術をおこない、うち45例(71%)がフォンタン手術に到達した。
【結論】5年生存率は76%で従来の報告より良好であった。また、フォンタン到達率も高く無脾症の治療成績は向上したと言える。2012年以降、予後不良なTAPVDに合併したPVOに対してカテーテル治療を積極的に導入し、困難な新生児期の開心姑息術を回避する試みに一定の治療効果が出たと考える。現時点ではステントの長期開存には問題が残り、またステントが適応困難なPVOもあり今後の課題である。
【対象と方法】2004年より2015年までの間に外科治療をおこなった無脾症63症例を対象とし後方視的に検討した。48例(76%)は胎児診断されていた。すべて機能的単心室例で二心室症例はいなかった。29例(46%)が総肺静脈還流異常症(TAPVD)を合併していた。そのうち17例がPVOを呈していた。新生児期にPVO解除をおこなった症例は11例、第1期手術として体肺動脈シャント手術が行われたのは26例であった。追跡期間は54±44ヶ月であった。Kaplan-Meier生存率曲線を求め、また多重ロジステイック回帰分析をおこなって死亡に対する予測因子を求めた。
【結果】5年生存率は75.9±5.7%であった。多変量解析では治療の年代が死亡の有意なリスク因子であった(p=0.007)。2011年までの44例で13例の死亡(30%)であったが、2012年以降の19例中、死亡は1例(5%)のみであった。54例(86%)が両方向性グレン手術をおこない、うち45例(71%)がフォンタン手術に到達した。
【結論】5年生存率は76%で従来の報告より良好であった。また、フォンタン到達率も高く無脾症の治療成績は向上したと言える。2012年以降、予後不良なTAPVDに合併したPVOに対してカテーテル治療を積極的に導入し、困難な新生児期の開心姑息術を回避する試みに一定の治療効果が出たと考える。現時点ではステントの長期開存には問題が残り、またステントが適応困難なPVOもあり今後の課題である。