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[I-OR204-06] 左冠動脈肺動脈起始症(Band-White-Garland症候群)に対する中期遠隔成績の検討
キーワード:左冠動脈肺動脈起始症、僧帽弁逆流、術後遠隔期
[背景・目的]左冠動脈肺動脈起始症(Band-White-Garland症候群)において,大部分の症例では左冠動脈が主肺動脈(MPA)の後面(posterior sinus)から起始しており,大動脈に直接移植することが可能であるが,主肺動脈の左前側方(non-facing sinus)から起始している場合には,大動脈との距離は遠く直接吻合が不可能な場合も多く種々の工夫が必要である.当院での9例のBWG症候群に対する冠動脈再建の工夫とその遠隔成績を検討した.[方法]対象は9例で,手術時年齢は3ヶ月から13歳(median; 12ヶ月)である.左冠動脈(LCA)の起始部は肺動脈のposterior sinusに相当するもの6例,non-facing sinus(主肺動脈の左前側方)に相当するもの3例であった.LCA移植法は,posterior sinus起始の6例ではいずれもMPAの後方をとうして,上行大動脈(Ao)への直接吻合を行った.non-facing sinus中央より起始する1例でAo壁とPA壁のフラップを前後壁として主幹部を延長しMPA前方を通した(Ao-PAフラップ法).non-facing sinus後方寄りで交連の高さから起始していた2例のうち,1例ではPAフラップによるspiral法でMPA後方を通しAoに吻合.その他1例ではPAフラップとAoをコの字型に切開し,trapdoorにして吻合した.MRに対しては,1度の2症例は放置,残る7例にMAP (Kay)を行い(後交連5例,両交連2例),癒合腱索の開窓術(1例)と前尖への人工腱索(1例)を追加した.[結果]退院前の術後カテーテル検査では,全例LCAの良好な開存を認めた.経過観察期間は9ヶ月から27年(median; 9.7年)で全例生存,冠動脈に起因する明らかな心筋虚血症状のある例もない.MRは,MR 3度が2例,2度が2例,1度以下が5例で,再介入なく経過している.[結語]BWG症候群では,全例で肺動脈や大動脈のフラップの利用により主幹部を延長することで,無理のない大動脈への直接吻合が可能であり,その後の僧帽弁に対する手術介入もなかった.