第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム1(I-S01)
Berlin Heart導入後の小児重症心不全治療と心臓移植

2016年7月6日(水) 08:40 〜 10:10 第A会場 (天空 A)

座長:
福嶌 教偉(国立循環器病研究センター 移植医療部)
鈴木 孝明(埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓外科)

I-S01-01~I-S01-07

08:40 〜 10:10

[I-S01-05] 小児心臓移植待機患者に対する左室補助人工心臓治療の現状
〜Berlin Heart EXCOR®からImplantable Deviceまで〜

平 将生1, 上野 高義1, 小澤 秀登1, 熱田 祐一1, 金谷 知潤1, 奥田 直樹1, 松長 由里子1, 小垣 滋豊2, 成田 淳2, 石田 秀和2, 澤 芳樹1 (1.大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科, 2.大阪大学大学院医学系研究科 小児科)

【背景】小児心臓移植待機患者の増加に伴い、BTTとしての補助人工心臓(VAD)によるサポートを導入した患者は年々増加している。これまでは、成人用体外式VAD(Nipro VAD)を小児患者に対して適応する工夫を行ってきたが、体格の小さい患者へは使用できず、体格が装着を許容しても、VAD関連合併症、入院の必要性の観点から、必ずしも満足のいく成績とは言えない(脳血管合併症回避率半年22.5%、1年11%、感染症回避率半年88%、1年88%)。そこで、当院では、近年、成人用植込型VADや小児用VADを小児心不全患者に対して積極的に導入しており、デバイス使用成績について検討を行った。
【対象】2012年6月~2016年1月までに当院にてVADを装着し、移植待機を行った小児心不全患者16例(拡張型心筋症10例、肥大型心筋症1例、拘束型心筋症3例、心筋炎後心筋症1例、致死性不整脈1例)。装着時年齢は平均6.4(0‐14)歳、平均BSAは0.75(0.26-1.39)m2、使用デバイスは、HVAD3例、Jarvik2000 4例、EVAHEART1例、Berlin Heart EXCOR8例であった。
【結果】平均サポート期間は374(45-1035)日であった。心臓移植到達例は7例(国内3、海外4)、死亡例は1例(脳血管合併症)であった。植込型(定常流)VAD装着8例のうち、脳血管合併症発症例は4例で、その回避率は半年で75%、1年で60%であった。外科的治療介入を要するドライブライン感染は3例で、その回避率は半年で100%、1年で75%であった。大動脈弁逆流を認めたのは2例で、1例は357日目に大動脈弁閉鎖術を施行した。術後前例が退院可能で復学している。Berlin Heart EXCOR装着8例のうち、脳血管合併症は1例、送脱血管刺入部感染は1例、ポンプ交換は5例で合計9回(0.36回/Pt./year)のみであった。1例はサポート期間45日で国内移植に到達した。
【まとめ】小児心臓移植待機患者に対し、植込型VADや小児用VADの導入により、VAD関連合併症が軽減でき、移植待機期間のQOL向上につながるが、長期管理での合併症は多く課題の一つと考えられた。