第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム3(I-S03)
小児心不全治療 -薬剤の基本的な使い方-

2016年7月6日(水) 10:20 〜 11:50 第A会場 (天空 A)

座長:
村上 智明(千葉県立こども病院 循環器内科)
大内 秀雄(国立循環器病研究センター 小児循環器科)

I-S03-01~I-S03-05

10:20 〜 11:50

[I-S03-03] 小児心不全治療 -薬剤の基本的な使い方-利尿薬

村上 智明 (千葉県立こども病院 循環器内科)

心不全診療はAHA/ACCガイドラインによるステージ分類に則って考えると非常に理解が容易である。利尿薬はstage C即ち心不全症状・徴候を有する場合にうっ血に対して投薬される薬剤である。心不全におけるうっ血状態では、体内で水・ナトリウム過剰であるにも関わらず循環血液量は減少することから、生体は交感神経系、レニンアンジオテンシンアルドステロン系、アルギニンバソプレッシン系などを動員して水・ナトリウムを保持するという悪循環に陥る。利尿薬はこのうっ血の解除を目的に使用される薬剤であり、心不全治療においては重要な役割をもつ薬剤の一つである。しかしながらあくまで血行動態を改善する薬剤であり、予後改善を目的とした薬剤ではないことから使用においては注意が必要である。
最も使われている薬剤はループ利尿薬であり、効果の速やかなフロセミドが頻用されるが長期使用が見込まれる場合には作用時間の長いトラセミド、アゾセミドへの変更が考慮される。サイアザイド系利尿薬はループ利尿薬と併用されることが多い。アルドステロン拮抗薬は、従来はフロセミドによる低カリウム血症の予防として用いられていたが、近年で収縮不全における生命予後改善効果が報告され、慢性心不全において積極的な投与が推奨されている。バソプレッシンV2受容体拮抗薬は新しい利尿薬であるが、集合管におけるV2受容体をブロックし水利尿を惹起する。
代表的な利尿薬の使用方法と小児におけるバソプレッシンV2受容体拮抗薬の投与について概説する。