第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム5(I-S05)
小児の画像診断の進歩:血流と機能を診る

2016年7月6日(水) 14:35 〜 16:05 第D会場 (オーロラ イースト)

座長:
安河内 聰(長野県立こども病院 循環器センター)
石井 正浩(北里大学医学部 小児科)

I-S05-01~I-S05-05

14:35 〜 16:05

[I-S05-02] 拡張早期左室内圧較差の解析による左室拡張能の新たな知見

高橋 健 (順天堂大学 小児科学教室)

近年様々な画像診断装置が進歩してきました。心機能検査時における心臓超音波検査の特徴は、空間及び時間解像度の高さにあり、これが流体力学的心機能解析を可能としています。
現在まで心臓の形態に関する心機能検査は、心筋の一次元的(直線的)の移動速度を計測するTissue Doppler法、心筋の二次元的(平面的)もしくは三次元的(空間的)な変形能を評価するSpeckle trackingと進歩してきました。しかしこれらは心室内の血流の解析ではなく、心臓の外壁の動きを評価しています。また血流に関する心機能検査は、Pulse Wave Doppler法と言う、ある一点を通過する血流速度を測定する方法に未だに留まっています。大変高度なメカニズムを持ったポンプである心臓の機能を評価するにはこれらの方法では不十分です。
拡張早期左室内圧較差(Intra-ventricular pressure difference: IVPD)は拡張早期の僧房弁から心尖部までの圧較差で、左室が左房から血液を引き込む力そのものであり、拡張能の本質を表します。侵襲的な検査が必要な拡張能のGold standardであるtau indexとも相関し、現在は心臓超音波検査で測定可能となりました。
今回の発表では、IVPDの測定方法、加齢によるIVPD値の変化を解説します。また疾患群の例として、IVPD解析により明らかとなった、心内修復術後のファロー四徴症左室拡張能の特徴について, 小児がん患者の化学療法後の心機能低下の早期発見のマーカーとしてのIVPDの役割について説明します。また胎児のIVPD測定による、在胎週数による拡張能の変化についても提示します。
今回の内容は、左室拡張能の新しい評価方法としてのIVPDの、小児循環器領域での有用性について解説し、今後有効利用の発展につながる内容とします。