第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム6(I-S06)
胎児診断のピットホールから学んだこと

2016年7月6日(水) 08:40 〜 10:10 第B会場 (天空 センター)

座長:
稲村 昇(大阪府立母子保健総合医療センター 小児循環器科)
前野 泰樹(久留米大学医学部 小児科)

I-S06-01~I-S06-05

08:40 〜 10:10

[I-S06-02] 胎児不整脈診断のピットフォール

前野 泰樹 (久留米大学医学部小児科)

 胎児期の不整脈では、通常は心電図が使用できないものの、Mモード法とドプラ法により詳細に診断することが可能である。胎児徐脈、頻脈、期外収縮ともに、心房と心室の収縮の関連を評価するが、胎児心エコーでは心房の収縮が明瞭に描出できるため、小さなP波がみえにくい心電図よりむしろ明確な診断ができるようなこともある。しかし、胎児不整脈の症例を実際に胎児期および周産期管理を行うと、数々の限界、ピットフォールを経験する。
 まず、不整脈の正確な診断に対する限界として、胎児心エコーでの心臓の動きや血流には、脈の電気的な信号とのタイムラグがある、という点がある。診断時には、常にこの差があることに注意し、その差も含めて判断、診断を進める必要がある。
 胎児期、および周産期の管理を判断するときには、さらに限界が多い。胎児の全身は実際には見えていない状態であり、生まれた後では当然分かるはずの異常が判明していないことがある。また血圧などのモニターもできないため、全身状態の評価が十分できない。また、心臓やその他の診断も多くは超音波診断によるものであり、異常が十分診断されていない可能性もある。そして何より、診断や状態の観察は、超音波検査の限られた時間内に限られ、出生後のように十分な時間をとって繰り返し検査を行ったり、長時間観察したりすることができない。周産期管理方法を決定していくときには、この限られた情報の中で行っていることに常に注意が必要である。胎児の完全房室ブロック症例で経験したピットフォールについて紹介し、注意点を考えみたい。