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[I-S07-03] 大動脈下体心室右室に対する薬物治療
演者のような一般の循環器内科医師に馴染みがなく、そしてその薬物治療効果がはっきりと示されていない病態の一つとして、大動脈に連結する体心室としての右室不全(subaortic and systemic RV failure)が挙げられる。シャント合併の無い修正大血管転位、2心室修復術後の症例としては、ダブルスイッチを行っていない修正大血管転位術後と心房スイッチ術後の完全大血管転位がその代表である。単心室修復術後で体心室右室や未修復・姑息術後(チアノーゼ)症例はここでは除き、正常肺体循環連結が達成されている前述の2心室症例に焦点を当てて論じることとする。体心室右室不全も臨床病態的には収縮不全・拡張不全であり、右室はほぼ例外なく肥大し、心内腔が拡張してくると一般の拡張型心筋症様の形態や血行動態を取ってくる。治療に関しては、基本的には体心室左室不全の治療をどう応用して薬物投与を行うかということになるが、現時点でエビデンスとして確固としたものは無い。理論的に応用するしかない訳であるが、心機能回復のための薬物治療のターゲットとなり得るのは、血流因子の改善、心室筋自体の収縮弛緩の改善、間質(線維化など)の改善である。一般の体心室左室不全の治療を適用する際には、MRIによるしっかりとした心機能の定量的な評価と呼気ガス分析を用いた心肺機能の評価を治療前後に行いエビデンスを蓄積・構築していくことが重要である。本発表で、当院で実際に行った体心室右室不全に対する治療の結果をもとに、体心室右室に対する有効な薬物治療指針について考察してみたい。