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[II-OR103-04] 完全大血管転位症1型における胎児期超音波所見と出生後経過の検討
Keywords:完全大血管転位、胎児診断、バルーン心房中隔裂開術
【背景】胎児診断の普及とともに、完全大血管転位症1型の胎児診断率も向上してきている。同疾患では、出生直後より重篤な状態となり手術に到達しない症例が一部存在すると報告されており、こうした症例を中心に、胎児診断による計画的分娩と早期治療にて予後向上が期待される。【目的】完全大血管転位症1型における胎児期超音波所見と出生後経過を検討し、計画的分娩と早期治療を要する症例を抽出するために有用な胎児期超音波所見を明らかにすること。【方法】2006年から2015年までの10年間に、著者所属の2施設において胎児診断された完全大血管転位症1型の27例について、胎児期後期 (36週以降)の卵円孔と動脈管の形態、出生後の緊急的心房中隔裂開術や一酸化窒素吸入療法を要する高度の低酸素血症の有無、長期予後を検討した。【結果】胎児期卵円孔形態は、redundant and fixed: 10例 (37%)、redundant: 8例 (30%)、Hypermobile septum: 8例 (30%)、normal: 1例 (4%)に分類された。動脈管狭窄 (最狭部径<2mm)は4例 (15%)に認めた。2例 (27, 35週) を除き正期産で出生し、出生体重は平均2930gであった。胎児心疾患を理由とした予定帝王切開術は2例で施行された。出生後高度の低酸素血症を認め、一酸化窒素吸入療法を要したのは1例、生後3時間以内の緊急的バルーン心房中隔裂開術を要したのはこの1例を含む5例 (19%) であった。この5例はいずれも、卵円孔形態がredundant and fixedで、うち2例に動脈管狭窄を認めた。卵円孔形態がredundant and fixedで動脈管狭窄を伴った3例のうち、2例で出生後緊急治療を要した。本症例群は全て動脈スイッチを経て長期生存した。【結論】胎児診断に基づく出生後の迅速な治療は完全大血管転位症1型の良好な予後に寄与する。卵円孔形態がredundant and fixedで動脈管狭窄を伴う症例については、緊急カテーテル治療を準備しての計画分娩を考慮すべきである。