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[II-OR104-02] 小さい左室を有する胎児―外科的介入の要否は胎児左室サイズから予測可能か―
キーワード:小さい左室、母体酸素療法、胎児診断
【目的】母体酸素療法は、二心室循環の確立が危惧されたり大動脈縮窄合併が疑われる小さな左室を有する胎児において、低形成を予防できるとされている。しかし、どの程度小さい左室がそれらのリスクが高いのか、そもそも左室サイズそのものによりリスクを推し量ることができるのかは不明で、本邦での近年の報告でも、胎児期は小さい左室であっても出生後は正常心であることも少なくない。胎児期に心内構造奇形のない小さな左室を有する児の外科的介入の要否を、胎児所見から予測できるかにつき、自験例を検討した。【方法】2003~11年に自施設で胎児心エコーを行った胎児で、僧房弁/三尖弁比 (M/T)<0.7かつ僧房弁Z-score (MV-Z) <‐2で、心内奇形を伴わない9症例を対象とした。エコー画像より計測したM/T, MV-Z、左室横径Z-score (LVD-Z)、左室/右室横径比 (LVD/RVD), 左室/右室長径比 (LVL/RVL), 卵円孔血流方向、大動脈峡部血流パターンと出生後の外科的介入の有無の関係を検討した【成績】胎児期の症例の内訳(重複あり)は大動脈縮窄疑い3例、左上大静脈遺残5例、卵円孔早期閉鎖2例。最終の胎児心エコーは33~39(中央値36)週に行われ、M/T 0.40~0.61, MV-Z -6.9~-3.6、LVD-Z -7.0~-1.7、LVD/RVD 0.35~0.65, LVL/RVL 0.79~1.01, 卵円孔血流は右左5例、両方向2例、閉鎖2例、大動脈峡部血流は順行性5例、to and fro 1例、逆行性3例であった。出生後外科的処置を要したものは大動脈縮窄1例と僧房弁狭窄1例で、それぞれM/T 0.61・0.54, MV-Z -5.2・-4.9、LVD-Z -3.7・-4.9、LVD/RVD 0.45・0.42, LVL/RVL 0.91・0.85, 卵円孔血流方向右左・閉鎖、大動脈峡部血流パターンいずれも逆行性で、左室サイズから外科的介入の要否を推定することはできなかった。【結論】左室サイズから外科的介入の要否を推定することは難しく、母体酸素療法の効果を検証するためには多数例による比較試験が必要と考えられた。