第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

外科治療1

一般口演2-01(II-OR201)
外科治療1

2016年7月7日(木) 15:35 〜 16:25 第C会場 (オーロラ ウェスト)

座長:
北川 哲也(徳島大学大学院 心臓血管外科学分野)

II-OR201-01~II-OR201-05

15:35 〜 16:25

[II-OR201-02] 多脾症における肺動静脈瘻の検討 

小林 真理子1, 麻生 俊英1, 武田 裕子1, 大中臣 康子1, 佐々木 孝1,2 (1.神奈川県立こども医療センター 心臓血管外科, 2.日本医科大学病院 心臓血管外科)

キーワード:肺動静脈瘻、多脾症候群、Kawashima法

【背景】多脾症候群(LAI)に対するKawashima法(TCPS)の後、高率に肺動静脈瘻(PAVM)が発生し、動脈酸素飽和度(SO2)の低下をきたすことが知られている。また、このPAVMは肝静脈血を肺循環に組み入れる(Fontan型手術(TCPC)の完成)ことで消失し、可逆性であることも知られている。しかし、TCPS後のPAVM形成時期やこの現象がLAIに特有なのか、TCPC至適時期等明らかでないことも多い。今回、単心室症のLAIを対象にTCPCに至る段階的手術経過中のSO2の推移を検討し、LAIにおけるPAVMに関し知験を得たので報告する。
【方法】2003年以降出生しTCPCに到達したLAI 22例を対象とした。三尖弁閉鎖(TA) 19例をコントロール群とした。両群ともTCPS(BCPS)時に肺動脈順行性血流を完全遮断した。両群のTCPS(BCPS)後、TCPC前後のSO2の変化、PAVM発生率を比較した。
【結果】1) SO2:LAI群では、TCPS後88.5±4.5%から8.4±4.2ヶ月後のTCPC前79.1±10.1%と低下し(p<0.01)、TCPC 1年後92.3±3.7%と上昇した(p<0.01)。一方、TA群ではBCPS後84.3%からTCPC前83.4%と著変なく(ns)、TCPC 1年後93.7%に上昇した(p<0.01)。2) PAVM:TCPC前のPAVMの発生率はLAI群:77.3%、TA群:15.9%であり、LAIはTA群より有意に多く(p<0.01)、両群ともTCPC後にPAVMの頻度、程度は減少した。
【考察】LAI群ではTCPS後平均8ヶ月の早期から高率にPAVMが発生し、SO2が低下する現象がとらえられた。また、形成されたPAVMはTCPC完成後1年でその頻度、程度とも減少しSO2の改善が得られた。一方、TA群では、BCPS後のSO2の低下はなく、またPAVMの発生も少なかった。TCPS後のPAVMの発生はLAI特有の現象である可能性が示唆された。
【結論】LAIではTCPS後8ヶ月の比較的早期よりPAVMの発生、それにともなうSO2の低下を招くことがわかった。PAVMによるTCPC周術期の過度の低酸素状態を回避するためには、LAIにおけるTCPCはTCPS後1年を目途におこなうのが適切と考える。