The 52st Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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パネルディスカッション

パネルディスカッション4(II-PD04)
「患者・家族支援を考える」 - Social support system of patients and their families -

Thu. Jul 7, 2016 4:10 PM - 5:40 PM 第E会場 (シンシア ノース)

座長:
西畠 信(総合病院鹿児島生協病院 小児科)
檜垣 高史(愛媛大学大学院医学系研究科 地域小児・周産期学)

II-PD04-01~II-PD04-04

4:10 PM - 5:40 PM

[II-PD04-04] 患者支援を医師はどう考える(診断書・意見書を書く立場)

城戸 佐知子 (兵庫県立こども病院 循環器内科)

 小児期~成人期を通して、患者が社会保障を受けるための書類では、その書き方は担当医療者に任されており、同じ疾患・病状の患者についての書類でも、内容には差異があることも多い。特に、成人期になってからの障害者年金の認定はかなり厳しいものとなっており、重症心疾患患者が生命的には問題なく成人期を迎えることができるようになった今、大きな問題となっている。外面的には普通に見える内部疾患患者では、「歩いて書類を持ってきた」という段階で認定を受けられないということもある。また、書類を受け取る担当当局の事情も各地域によって差異があり、患者が転居などで別の都道府県に移動した際に、以前とは違う判断に戸惑うこともある。診断書の描き方には明確なガイドラインがあるわけではなく、医師となってから教育を受けるチャンスが規定されているわけでもない。その結果、社会保障を、心疾患を含めた患者全体の状況(学業・就労能力・合併奇形)まで鑑みて当てはめるのか、純粋に心疾患として文面通りに判断するのかという点も、一定の見解がないようである。
 2014年に小児病院を対象として、どのような基準で障害者年金を記載しているのか、医師側の状況を確認するためにアンケートを施行した。障害者年金は1級・2級が支援の対象となるが、そのためには一般状態区分表「ウ」以上である必要がある。アンケートの結果、一般区分状態を「文字通り捉えている」という回答が36%、「文言を少し解釈して病状をできるだけ反映している」という回答が64%であったが、状態の良いフォンタン型手術症例では、ほぼ100%の施設から区分「イ」としているとの回答であった。しかし、状態が比較的良いと判断されるフォンタン型手術症例でも、負荷が多ければいつかはfailureするとの見解もあり、就労してから初めて「健常者と同じようには労働できない」との不安を訴えられるケースは多い。また医療者側からも、心疾患の社会・医療保障制度が複雑であり医師側が全て把握しきれない、過去と現在の認定基準に差があり実情と異なっている、という問題が指摘された。
 アンケート結果と、患者から指摘された実情と異なる認定の実例を交えて報告するが、医療者もやはり迷いの中で複雑な書類に対峙していることは明確である。