第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション6(II-PD06)
学校心臓検診の意義:各心疾患毎のアウトカムから探る

2016年7月7日(木) 08:40 〜 10:10 第D会場 (オーロラ イースト)

座長:
住友 直方(埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓科)
牛ノ濱 大也(大濠こどもクリニック )

II-PD06-01~II-PD06-05

08:40 〜 10:10

[II-PD06-01] WPW症候群

牛ノ濱 大也 (大濠こどもクリニック)

 学校心臓検診ではWPW症候群(WPW)は、心電図検査により副伝導路(AP)心室早期興奮(VPE)を示す場合抽出される。WPWで抽出された児童・生徒の多くは無症候性であるが、抽出時無症候性でもその後上室頻拍SVTや心房細動AFを生じる可能性、AFから心室細動VFへ変化することにより、突然死(SCD)の可能性が指摘されている。今回学校心臓検診でWPWを抽出する意義・問題点について言及する。 【方法】福岡県の学校心臓検診で、WPWの抽出される頻度を検討した。【結果】学校心臓検診でWPWの抽出される頻度: H23〜27年度、福岡県では高校生211559人中、自動診断:201人(0.095%)、目視判読:288人(0.136%)であった。いずれの年度でも自動診断のみより目視判断を加えた方が、抽出率が高かった。【考察】一般的にWPWの抽出される頻度は1000人に1〜3人(0.1〜0.3%)と報告されている。また、無症候性WPWの20-30%が上室頻拍を起こすと報告されている。小児・思春期を対象とした経過観察期間10年以上の報告では、SCDの頻度は、0.0002–0.0039 patient-yearと多いものではない。AP順伝導の有効不応期が短いものではAFからVFへ移行しやすい可能性があるが、AP順伝導は1歳未満で診断されたWPWの約40%、小児・思春期では0%–26%、成人では最大31%が消失すると報告され、成人より若年者にSCDが多い理由と考えられる。【まとめ】学校心臓検診においてWPWを抽出する意義は、SVT、AFを予測して対応すること、さらにはSCDを予防することにある。しかしながら特にSCDに関しては児童・生徒のリスク層別化を確実に行う方法が現在のところない。現在行える対処方法としては、失神、動悸などの症状の出現の有無の確認と12誘導心電図、運動負荷心電図、ホルター心電図など非侵襲的検査を定期的に行うことであると考えられる。今後学校心臓検診で抽出されるWPWを対象に自然歴、リスク層別化の検討を行うことが必要である。