第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム12(II-S12)
小児循環器医療におけるシミュレーション医学の最前線

2016年7月7日(木) 10:25 〜 11:55 第B会場 (天空 センター)

座長:
白石 公(国立循環器病研究センター 小児循環器部)
板谷 慶一(京都府立医科大学 心臓血管外科)

II-S12-01~II-S12-08

10:25 〜 11:55

[II-S12-02] 立体組織再生のための3Dプリンタとバイオロジカルスキャフォルド

山岡 哲二 (国立循環器病研究センター 研究所生体医工学部)

 組織再生両方の歴史は40年近く以前に遡る。そして、近年、自己iPS細胞由来網膜色素上皮シート移植が実施され、再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療新法)が施行されるなど、その臨床化が加速している。かつて注目された細胞を利用した組織再生法では、軟骨や心筋、さらには、肝臓や腎臓などの複雑な臓器の新たな再生方として期待されたが、現状は、0次元の細胞懸濁液や、2次元の細胞シートの移植という単純な形態で実施されている。iPS細胞の出現により有力な細胞の入手が可能になったことは間違いないが、組織/臓器の3次元構造の再構築には、驚くようなセレンディピティーが必要かもしれない。
3Dプリンター(Additive Manufacturing)は、工業的には新しい技術ではないが、近年、再生医療分野において注目されている。直接、臓器や組織を印刷して移植するというようなアプローチも魅力的ではあるが、国内外の現状では人工骨の造形などが現実的なところである。細胞を3次元的に配列することは工学的に可能であるが皮膚組織や血管の主成分はECMタンパク質であり、なかなか実用化には困難が伴う。手術支援用技術や再生医療研究デバイス作成などでは3Dプリンターは大きな力を発揮している1)。一方で、バイオロジカルスキャホールドは、比較的新しい用語であり、(1)生体由来タンパクから作成されたスキャホールド、(2)組織接着性や生理活性を搭載した生体模倣スキャホールド(3)ヒトや動物の組織から生体成分を除去してECMのみを残した脱細胞スキャホールドなどを指す。特に、海外では脱細胞スキャホールド製品が存在し、近年、心臓、肺、腎臓などの脱細胞全臓器が注目を集めている。本講演では、これら両者についてご紹介したい。
文献1)特集・3Dプリンタと医療(山岡哲二監修)、人工臓器44巻1号, 31-61 (2015)