10:25 〜 11:55
[II-S12-03] 先天性心疾患症例のUT-Heartを用いたマルチスケール・マルチフィジックス心臓シミュレーション
心臓シミュレータUT-Heartの開発は東京大学新領域創成科学研究科で計算科学(久田)と医学(杉浦)の学融合により2001年から始まった。UT-Heartは、分子・細胞から出発し、刺激伝導系・興奮収縮連関・冠循環なども実装し、血液流体と心筋や弁組織などの相互作用を含め、最先端の計算科学でスーパーコンピューターを用いて正面から計算した、マルチフィジックス(力学・電気生理・生化学)、マルチスケール(分子~循環系)の心臓シミュレータである。我々はUT-Heartによる患者の個別心臓シミュレーションを用いて、最適医療の個別予測に取り組んでいる。
先天性心疾患のコンピュータシミュレーションは、導管内の流体解析や、等価電気回路モデルを用いた血行動態の検討などで行われてきた。これらのアプローチでは計算コストを節減できるが、左右心房と心室・弁・血液・血管を一括で扱う全心臓シミュレーションは難しい。我々はUT-Heartで複雑な先天性心疾患の全心臓シミュレーションを可能とした。また、先天性心疾患の手術例につき術前・術後状態を作成し、実際の術前・術後状態と比較し検討した。具体的には術前の血行動態を十分再現した上で、コンピューター内で手術して術後状態を計算し、実際の術後と比較した。施行されなかった術式も検討した。
その結果、複数の先天性心疾患患者の、血流・血圧・心筋や弁の運動・血液酸素飽和度・血液の混合・標準12誘導心電図を計算し可視化しえた。血液酸素飽和度、血圧や心電図は実記録と良く一致した。術後の血圧・血流に加え心臓のATP消費量などエネルギー指標も計算でき、術後状態の定量的な比較を実現した。複雑な先天性心疾患の術式決定に際しては、限られた報告と、通説、術者の経験を判断材料にせざるを得ない。個別全心臓シミュレーションは方針検討の指標を提供でき、患者の予後改善や、経験の少ない医師への教育効果が期待される。本講演ではUT-Heartでの先天性心疾患シミュレーションの最新の結果を示す。
843
843-16=827字:800字程度まで(半角は1/2字とカウント)
先天性心疾患のコンピュータシミュレーションは、導管内の流体解析や、等価電気回路モデルを用いた血行動態の検討などで行われてきた。これらのアプローチでは計算コストを節減できるが、左右心房と心室・弁・血液・血管を一括で扱う全心臓シミュレーションは難しい。我々はUT-Heartで複雑な先天性心疾患の全心臓シミュレーションを可能とした。また、先天性心疾患の手術例につき術前・術後状態を作成し、実際の術前・術後状態と比較し検討した。具体的には術前の血行動態を十分再現した上で、コンピューター内で手術して術後状態を計算し、実際の術後と比較した。施行されなかった術式も検討した。
その結果、複数の先天性心疾患患者の、血流・血圧・心筋や弁の運動・血液酸素飽和度・血液の混合・標準12誘導心電図を計算し可視化しえた。血液酸素飽和度、血圧や心電図は実記録と良く一致した。術後の血圧・血流に加え心臓のATP消費量などエネルギー指標も計算でき、術後状態の定量的な比較を実現した。複雑な先天性心疾患の術式決定に際しては、限られた報告と、通説、術者の経験を判断材料にせざるを得ない。個別全心臓シミュレーションは方針検討の指標を提供でき、患者の予後改善や、経験の少ない医師への教育効果が期待される。本講演ではUT-Heartでの先天性心疾患シミュレーションの最新の結果を示す。
843
843-16=827字:800字程度まで(半角は1/2字とカウント)