10:25 AM - 11:55 AM
[II-S12-08] 患者データから自施設で作製した,中空心臓立体模型を用いた心臓手術シミュレーション
【背景と目的】当施設では2014年から市販のパーソナル3Dプリンターを用いて,患者データから自施設内で心臓立体模型を作製してきた.稀な複合先天性心疾患の手術シミュレーションにおける中空心臓立体模型の有用性を検討する.【方法】OsiriX(Pixmeo社)を用いてCT画像のDICOMデータをSTL形式(3Dプリンター用フォーマット)に変換し,3DプリンターUP Plus(TierTime Technology社)で(1)ABS樹脂製実体模型を造形した.(1)と,(1)を元にした鋳型から(2)透明シリコン製中空模型を作製した.模型作製は全て自施設内で行い,元の3D-CT画像と(1)も心臓血管外科医に供覧した.作製時間を短縮し心内構造が観察しやすいよう,模型の作製範囲を設定した.(2)を用いたシミュレート後心内修復術に臨んだ.【結果】DORV (S, D, L;Anatomically corrected malposition of the great arteries型), PS, Rt aortic arch, Central shunt術(他院)後の患者データから模型を作製した.作製時間/費用は各々(1) 22時間/5000円,鋳型8時間/3000円×2,(2)3日/1万円.3D-CT画像や(1)では心室―大血管の位置関係はある程度把握できたが,心内構造の情報は限られた.3D-CT画像では冠動脈の走行,胸骨や他臓器との位置関係が把握できた.(2)は手にとり様々な角度から,心室―大血管の位置関係や切除心筋の範囲など心内構造を詳細に観察できた.患者家族への手術説明にも用い,心内reroutingのシミュレート後,手術室への携帯も可能であった.術中に模型と同様の心内形態を確認しえ,手術シミュレーターとして実用可能な精度を有していた.【考察と結論】手にとることができ可搬性を有する透明シリコン製中空模型は心臓手術シミュレーターとして優れ,稀な心疾患で特に有用性が高い.自施設内での作製は作製時間や経済性,心臓血管外科医との連携などで利点を有する.他の画像診断を補完的に組み合わせることで,より質の高い手術が可能となる.