The 52st Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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シンポジウム(多領域専門職部門)

シンポジウム(多領域専門職部門)(II-TRS01)
死にゆく子どもを持つ家族の多職種協働によるチームアプローチ

Thu. Jul 7, 2016 1:00 PM - 2:30 PM 第F会場 (シンシア サウス)

座長:
船戸 正久(大阪発達総合療育センター)
萩原 綾子(神奈川県立こども医療センター)

II-TRS01-01~II-TRS01-03

1:00 PM - 2:30 PM

[II-TRS01-02] 急性期医療領域でのこどもの看取り

植田 育也 (埼玉県立小児医療センター 集中治療科)

急性期医療の領域では、救命治療を進めながらも常に絶対的な予後不良を示す所見の出現について監視をする必要がある。その場合には、救命治療と並行し、その終了点をも同時に考えることになる。例えば治療中に、循環状態は保持されているのに急速に瞳孔が散大固定となってしまった場合。この場合には、治療を続ける傍ら中枢神経系の精査を行う。治療可能な病態が除外される代わりに、原因が明らかな脳ヘルニアが判明した時には、いつまでも盲目的に同じ強度の救命治療を続けていくわけにはいかない。この様に、こどもが予後不良であり、終末期であることを診断した場合には、医療者は、まずは速やかに、平易で直接的な言葉で家族にそれを伝える事が大切である。
 予後不良の宣告の後には、医療者は家族の中に「うちの子はこの後どうなるのか……」との思いがわき出てくるのを見逃さないように努める。これは家族にとっての、こどもの死の「受け止め」である。(「受け入れ」ではない。急性期の「受け入れ」はおよそ困難である。)まずは看取りの医療の開始点として、「予後不良の告知」が家族の心の中に入り込んだ瞬間を捉える必要がある。そのためには、告知後にこそ医療者は家族の近くに寄り添うよう、心掛ける。
 次に、家族のこの思いを受けて、最後に残された時間をこの子と過ごすための方策を共に考えることを始める。看取りをおこなう際に、医療者は、異常な医学的所見への対応という、これまで診療の常識を一時保留する必要がある。そのままの姿勢での診療は、すなわち無為な延命となり、それは心停止までの時間を長くすることになる。そして、それは必ずしもこどもの幸福につながらない可能性があるということを想定する。
 本発表では、「難しいですね。」「ケースバイケースですね。」という従来の結末から一歩踏み込んで、新しい指針の示された時代に則した、これからの急性期医療におけるこどもの看取りについて考えてみたい。