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[III-OR116-01] 新しい「小児心電図の基準値」を用いた小児期肥大型心筋症の心電図抽出基準に関する検討
キーワード:肥大型心筋症、心電図、スクリーニング
【背景】小児における肥大型心筋症 (HCM) のECG、UCG上の抽出/診断基準は全世界的にない。中学で診断されるHCM患児のECG所見出現時期に関する成績も少ない。【目的】HCM抽出のための波高基準値を作成し、中1で初めて診断された患児の小1時のECGを検討すること。【方法】1. 基準値の作成;基礎疾患・不整脈・ST/T波異常を有する例を除外した小1男子8408名、女子8462名のECGを用いた。心検時のHCMの抽出頻度は数万人に1人と推測されており、5000人に1人の抽出基準を検討した。対象者の99.98パーセンタイル値および統計学的に片側で5000人に1人を抽出する値 (平均値 + 3.540 x 標準偏差)の両者を満たす値とした。肥大所見として、1) SV1+RV5, 2) SV1+RV6, 3) Cornell基準(RaVL+SV3), 4) Cornell product (Cornell基準x QRS幅)を用いた。今回新たに5) V2基準 (V2のR波とS波の加算値, RV2+SV2), 6) V3基準(RV3+SV3), 7) V4基準(RV4+SV4)も検討した。2. 患児;K病院でフォロー中の心検時診断例11例 (男児9例、女児2例)のうち、中1で初めて診断された9例(全例男児)の小1時のECGを入手し検討した。9例中1例が18歳で突然死し、1例は16歳時院外心停止を起こした。【成績】小1男児の抽出基準値は、1)≧6.1 mV, 2)≧5.3 mV, Cornell基準≧3.9 mV, Cornell Product≧3474 mm*ms, V2基準≧6.5 mV, V3基準≧5.6 mV, V4基準≧5.2 mVであった。各基準を満たした例数はV3基準 3例、Cornell基準、Cornell product、V2基準が各々1例であった。V3基準を満たした3例は突然死例、院外心停止例、および中1時心室壁厚が既に19mmあった1例であった。小1心電図の自動診断所見は[正常範囲内]、[境界域-異常]、[境界域-正常]であった。【結論】HCM抽出基準値の作成および心室中隔肥厚を反映すると考えられるV3基準の採用により、小児期HCM重症例の早期診断と早期介入が可能と考えられた。小1女子、中1、高1での基準値作成も必要と考えられた。