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[III-OR116-05] ミトコンドリア薬物送達システムを用いた心筋炎に対する新たな治療戦略
キーワード:心筋炎治療、酸化ストレス、ミトコンドリアDDS
【背景】心筋炎は心筋組織の炎症から広範な細胞死に帰結する一連の疾患群である。治療の主眼は心筋保護と再生にあるが、有効な薬剤は存在しない。我々はこれまでミトコンドリア (Mt) 標的型Drug Delivery System (DDS)であるMITO-Porterを用いて、ゲンタマイシンなど様々なMt作動薬をMt選択的に送達することで優れた薬理効果が得られることを報告してきた(Abe J et al. J. Pharm. Sci. (2016) 105: 734-40; Yamada Y. Yakugaku Zasshi (2016) 136: 55-62)。酸化ストレスや細胞死を制御するMtを標的とした治療戦略は心筋炎の新たな治療として有用である可能性がある。【目的】MITO-Porterを用いた心筋炎に対する治療戦略の有効性の検証を目的とした。【方法】MITO-PorterにMt治療分子を封入し、標的細胞Mtへの導入実験を行った。続いて、導入した細胞を用いて酸化ストレス負荷実験を施行した。In vitro系では心筋細胞との共培養実験を、in vivo系では薬剤処理マウスを用いてその有効性を検証した。【結果】MITO-PorterによりMt治療分子は標的細胞に取り込まれ、Mtに送達されることを確認した。In vitro系で細胞生存率の上昇を、in vivo系では個体生存率の上昇を認め、送達分子によるMt治療効果が示唆された。【考察】心筋組織は活性酸素種の発生源であるMtを最も多く含んでおり、健常時の酸化ストレスバランスは厳密に制御されている。炎症を契機としたその破綻は病態に大きく関与し、増悪した酸化ストレス下の心筋細胞Mtを治療する戦略は心筋保護と再生に寄与し得ると考えられた。【結論】Mt標的型DDSを用いた心筋細胞Mtを治療する戦略は心筋炎の薬物療法として有望である。