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[III-PD03-03] 左心低形成症候群の外科治療戦略と成績
【目的】左心低形成症候群(HLHS)の病態は多様で様々な危険因子を有し症例に応じて異なる治療戦略が選択可能である。当院における治療成績を検討した。【方法】2006年から2015年までのclassic HLHSの77例を対象とした。初回姑息手術は新生児期一期的Norwood手術(pN群)30例、両側肺動脈絞扼術(bPAB群)47例であった。手術成績、術後死亡の危険因子、Fontan手術到達率について検討した。【結果】初回手術後の手術死亡はpN群なし、bPAB群3例。第二期手術までの遠隔死亡はpN群7例、bPAB群なしであった。pN群の23例が5.7±2.1ヶ月後にBDG手術を施行。またbPAB群の22例が術後0.9±1.2ヶ月後にNorwood手術を、22例が3.7±1.4ヶ月ごにNorwood+BDG手術を施行した。第二期手術以降の死亡はpN群6例、bPAB群8例で、累積生存率(5年)はpN群56.3%、bPAB群77.0%であった。これまでに31例がFontan手術に到達し、19例が待機中である。Fontan手術非到達率(5年)はpN群44.5%、bPAB群38.7%であった。Fontan前死亡の独立危険因子は認められなかったが、術前危険因子が2個以上の症例(high risk群)は1個以下の症例(low risk群)に比し死亡率が高かった(p=0.04)。またpN群のlow risk症例の10例7例がFontan手術に到達、1例が待機中であるのに対し、pN群のhigh risk症例は経過中45%と高い死亡率であった。一方でbPAB群のhigh risk症例のうち第二期手術でNorwood+BDG手術を施行した症例では16.7%と低い死亡率であった。Fontan術後の心臓カテーテル検査(n=27、平均値)はCVP:11.0mmHg、RVEDP:4.1mmHg、CI:3.5L/min/M2、SaO2:94.2%、PA index:168 mm2/M2で、術式間に差はなかった。【結語】新生児期一期的Norwood手術はlow risk症例では良好な成績で施行できるが、high risk症例では遠隔死亡が多くFontan到達率も満足のいくものではなかった。両側肺動脈絞扼術後のNorwood+BDG手術はhigh risk症例に対して有効な治療戦略となりうる。