第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム8(III-S08)
左側房室弁の外科治療

2016年7月8日(金) 10:20 〜 11:50 第E会場 (シンシア ノース)

座長:
山岸 正明(京都府立医科大学小児医療センター 小児心臓血管外科)
坂本 喜三郎(静岡県立こども病院 心臓血管外科)

III-S08-01~III-S08-04

10:20 〜 11:50

[III-S08-02] AVSDに対するmodified single patch repair

笠原 真悟1, 佐野 俊和2, 堀尾 直裕2, 小林 純子2, 石神 修大2, 藤井 泰宏2, 黒子 洋介2, 小谷 恭弘2, 新井 禎彦2, 佐野 俊二2 (1.岡山大学医歯薬学総合研究科 高齢社会医療・介護機器研究推進講座 心臓血管外科, 2.岡山大学病院 心臓血管外科)

(緒言)完全型房室中隔欠損(AVSD)の手術方法はTwo-patch法(T-P)と一つのPatchで閉鎖するOne-patch法にわかれる。後者の方法はDr. Graham NunnのModified one-patch法(mO-P)として広く知られるようになった。今回、同時期に行ったT-P法との比較検討を行った。(対象、方法)対象は2005年から2015年までの68例。VSDのpouch formation例や、右室流出路狭窄例、Unbalanced ventricle症例は除外した。またすべて当院での初回手術例を対象とした。T-P法例は27例(年齢8.1±5.9ヶ月、体重5.1±1.9kg)、でmO-P法例は41例(年齢6.6±5.3ヶ月、体重4.8±1.3kg)であった。PABの先行例はT-P群で13例(37%)、m0-P群では2例(7%)であった。術式の選択にあたっては当初はVSDの深さが10mm以上の症例ではT-P法を選択したが、経験を積むに従い2人のsurgeons’ preferenceに移行した。2つの方法に対し、後方視的に再手術率、VSD径、LVDd、 EF、BNP、大動脈遮断時間(ACC)等を比較検討した。(結果)死亡例はT-P群にのみ1例認めた。この症例は生直後より重度の房室弁逆流を持つ、dysplastic valveの症例で新生児期に手術を行い、2ヶ月目で再手術を行ったが心不全のため死亡した。再手術例はT-P群に4例、mO-P群に1例認めた。いずれの症例もdysplastic valve、double Lt. AV valve orificeなどのLt. lateral leafletの形成不全に由来するものであった。また左室流出路狭窄例、不整脈症例は認めていない。表にそれぞれの群での比較を示すが、mO-P群でVSD径はで浅く、また大動脈遮断時間は有意に短く(T-P:mO-P=97.4±25:72.5±18,P=0.001)、BNPも低い(T-P:mO-P=42.8±33:23.6±17,P=0.038)傾向を認めた。(考察、結語)mO-P法は手術成績も含め満足すべき結果であり、T-P法に比べ遜色無い成績と考えられた。術式の選択にあったてはそれぞれの術式は手術を単純化するものではなく、質を求めた術式の選択でありたい。