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[III-S08-03] 左心低形成症候群に対する三尖弁形成術の成績
【目的】高度三尖弁逆流(TR)は、左心低形成症候群(HLHS)患者の予後不良因子であることが知られている。新生児期から外科的弁逆流制御=弁形成術を要する症例もいる。この研究では、Fontan pathwayの中で高度TRを呈したHLHS患者に対して行った三尖弁形成術(TVP)の成績を検討する。【方法】2000年1月~2016年1月、moderate以上のTRを合併した24例のHLHS患者でTVPを適応。逆流弁の形態に合わせTVPは以下の手技の1つあるいは複数を組み合わせて行った。1;commissural annuloplasty, 2;Edge to Edge repair, 3;minor cleftの閉鎖, 4;tethered leafletに対するtension apparatusの切除, 5;Gore-Tex stripによるinter-annular bridge(IAB)の設置。TRのgradeを 0:none, 1:trivial, 2:mild, 3:moderate, 4:severeとし、TVP前後のTRの変化をフォローした。【結果】TVP施行時、中央値日齢・体重は55日(日齢0-1.5歳)、3.3(2.5-9.6) kg(新生児9例)。平均TR gradeは3.38±0.65。時期は、BiPAB時に2例、Norwood手術時に11例、Glenn手術時に6例、Fontan手術時に2例、またinterstageに2例で施行。それぞれのTVPで平均1.8±0.73種の上記手技を適応(10例でIAB設置)。TVP後のf/uは1.9年(21日-13.4年)。院内死亡8例(含早期死亡3例)。TVP後約1ヶ月のエコーで、平均TR gradeは1.47±0.96と有意な軽減を確認(p≦0.0001)。またこの軽減は、TVP施行時期によらず確認された(Glenn以前(n=16) vs Glenn以降(n=8), 3.44±0.63から1.46±1.05 vs 3.25±0.71から1.43±0.79)。5例でTR継続のため、TVP後2.3ヶ月(7日-1.7年)で再手術介入を要した(re-TVP4例、TVR1例)。【結語】高度TRを持つHLHS患者に、複数手技を組み合わせたTVPは効果的に行い得る。Gore-Tex stripによるIAB設置という新たな弁形成手技は、弁尖自体へ縫合糸を置くことや、不可逆的な弁輪縫縮を回避しつつ、逆流制御が行え、成長を続ける小児弁に対するよい選択肢になると考えている。