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[III-S08-04] 左側房室弁形成における自己心膜補填の検討
【背景】左側房室弁に対する弁形成やその再手術では、弁尖の短縮や肥厚のため、裂隙の縫合や弁輪縫縮、人工腱索では逆流を制御できない場合も少なくない。当施設では積極的に自己心膜による弁組織の補填している。【目的】自己心膜補填を行った症例で、逆流の程度、自己心膜の変性による狭窄の有無を後方視的に検討した。【方法】2007年から2015年までに左側房室弁形成を行ったうち、自己心膜補填を伴った7例を対象とした。いずれも心内膜床欠損症(完全型5例、不完全型2例)であり、男女比1:6、月齢1か月-62歳(中央値6か月)、体重3.4-42kg(中央値5.8kg)、3例がダウン症であった。以前に手術介入があった症例が4例で、再手術理由が逆流遺残・悪化3例、感染1例。評価は術前、術後に経胸壁心エコーで行い、房室弁逆流の程度(無し:0、微量:0.5、軽度:1、中等度:2、重度:3)、自己心膜の変性の評価として、左側房室弁流入速度、自己心膜補填部分の肥厚の有無を比較検討した。【結果】在院死亡は無かった。平均観察期間は17(1-59)か月、再手術は無かった。房室弁逆流は、術前平均1.93(0-3)度、術後平均1.07(0.5-2)度であり有意に改善した(P<0.05)。房室弁流入速度は7例中5例で計測され、平均1.5(0.8-2.3)m/秒。残りの2例も狭窄の所見は認めなかった。自己心膜弁尖の肥厚は2例で認めたが、可動性は良好であり、中等度以上の逆流や狭窄は認めなかった。【考察】左側房室弁形成後の再手術は少なくない。弁尖の裂開、短縮により逆流が悪化する症例が見受けられる。弁尖補填を行うことによって、弁尖の緊張が緩和され、より長期間の再手術回避が期待できる。近年、異物の不使用という観点から自己心膜による弁形成手術が小児領域でも行われてきている。その耐久性はまだ議論されており、今後も経過観察が必要である。【結論】自己心膜補填を併施した左側房室弁形成後の弁機能は、中期的に保たれると考えられた。