第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

Legend Lecture

Legend Lecture1(LL01)
心電図が小児循環器学に果たした役割

2016年7月6日(水) 16:20 〜 17:05 第A会場 (天空 A)

座長:
住友 直方(埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓科)

LL01-01

16:20 〜 17:05

[LL01-01] 心電図が小児循環器学に果たした役割

長嶋 正實 (愛知県済生会リハビリテーション病院)

 1887年イギリスのWaller ADが初めてヒトの心電図を記録してから130年になる。その後の心電図学の進歩はめざましく、体表面心電図だけでなく心内心電図を応用したマッピング、カテーテルアブレーションなど多くの不整脈治療が行われるようになった。その間の心電図研究の進歩を俯瞰し、小児循環器学に果たした役割を考えてみたい。
日本で1911年にはじめて心電図記録が行われたが、本格的な心電図研究が始まったのは1950年頃からである。小児心電図の分野でもこの頃から心電図に関するいくつかの論文が出され始めているが大国眞彦先生を中心に小児心電図の基礎を作られ、1964年に「小児心電図のよみかた」を上梓された。大国先生の後に小児心電図研究の発展は故本田 悳先生を中心にしたグループや新村一郎先生のグループが尽力された。新村先生は小児不整脈勉強会、小児心電研究会(現日本小児心電学会)を立ち上げ、現在の小児心電図学や不整脈学の発展に大きく貢献され、現在もなお精力的に後進の指導に努められている。
世界に類を見ない全児童生徒を対象にした学校心臓検診は心電図や不整脈の研究と応用をさらに発展させた。学校心臓検診は突然死を予防するために始められたともいわれているが心臓検診のために多くのデータが蓄積され、AEDの普及と相俟って児童生徒の突然死を激減させた。これは術後不整脈、致死的不整脈の早期発見と診断に基づく治療と管理の進歩が大きい。
またホルター心電図や体表面心電図も不整脈の診断治療に大きく貢献してきた。我々がホルター心電図を臨床応用し始めたのは1976年頃からである。当時は子どもには大き過ぎる記録器を使用し、心電図波形をテープレコーダーに記録し、解析した。
現在も小児心電図をもう一度見直そうと研究を進めている小児循環器医も増え、さらにこの分野の発展が期待され、心電図の重要性が再確認されている。
若い小児科医は心エコー検査だけでなく、是非情報の多い心電図もジーと診てほしい。