1:00 PM - 1:45 PM
[LL02-01] 先天性心疾患診療における心機能・血行動態
何を求め、結果をどう考え、そして将来へどう繋げるか
心機能血行動態分析は、他のデータや臨床研究と同様に、日常診療の向上に繋がるものでなくてはいけない。その視点で、本日は、演者のこの分野での研究の流れ、そして、心疾患児の将来における危惧を述べたい。
先天性心疾患で最も高頻度に“心不全”を発症するのは大きな心室中隔欠損(VSD)であり、1970年代には多く死亡し、そのため、どうにか内科治療で改善出来ないかと模索した。それらの乳児の左室駆出分画は正常以下であり、当時のRudolphのTextbookには、ジギタリスが第一選択で、ドーパミンも有効かもしれない(may)、とあった。しかしそれらの急性効果を実際に調べると一定の有効性はなかった。VSDの心不全の本質は容量負荷であり、それが治療のターゲットとなる。そこで血管拡張療法の効果を調べ、その有効性と機序を示した。
一方、心不全VSD乳児の左室では、容積に比して心筋重量が相対的に不足している。すなわち、負荷に対して筋肉量が少なければ、単位筋肉の不全はなくても、全体としては機能不全に陥るのは自明であった。先天性心疾患の“心不全”は、負荷と心室総体(容積と心筋量)の関係、即ち壁応力を勘案しなくては診療の役には立たない。そこでColanらの応力速度関係の有用性を検証し、薬物治療効果の機序が理解出来た。また、Jatene手術、僧帽弁置換手術のおける左室adaptabilityの判定のための“予測壁応力”を考え、その有用性を示した。また、Fontan型手術後は極めて特異的であり四腔心の心不全とは全く異なり、その理解の中に治療戦略へのヒントがある。
近年は大動脈反射波に注目しその臨床的意義を考察している。大動脈への手術操作術後で、その反射波が左室に及ぼす軽微な影響を考察し、それが小児の長い長い術後人生においてリスク要因となる危惧を述べる。
心機能を全身の血行動態の中で捉え、その解析から病態の本質を抽出し、短期的視点でなく発達~生涯心臓病学の視点から適切に継続的に対応することが、患者のより良き人生に寄与する。
先天性心疾患で最も高頻度に“心不全”を発症するのは大きな心室中隔欠損(VSD)であり、1970年代には多く死亡し、そのため、どうにか内科治療で改善出来ないかと模索した。それらの乳児の左室駆出分画は正常以下であり、当時のRudolphのTextbookには、ジギタリスが第一選択で、ドーパミンも有効かもしれない(may)、とあった。しかしそれらの急性効果を実際に調べると一定の有効性はなかった。VSDの心不全の本質は容量負荷であり、それが治療のターゲットとなる。そこで血管拡張療法の効果を調べ、その有効性と機序を示した。
一方、心不全VSD乳児の左室では、容積に比して心筋重量が相対的に不足している。すなわち、負荷に対して筋肉量が少なければ、単位筋肉の不全はなくても、全体としては機能不全に陥るのは自明であった。先天性心疾患の“心不全”は、負荷と心室総体(容積と心筋量)の関係、即ち壁応力を勘案しなくては診療の役には立たない。そこでColanらの応力速度関係の有用性を検証し、薬物治療効果の機序が理解出来た。また、Jatene手術、僧帽弁置換手術のおける左室adaptabilityの判定のための“予測壁応力”を考え、その有用性を示した。また、Fontan型手術後は極めて特異的であり四腔心の心不全とは全く異なり、その理解の中に治療戦略へのヒントがある。
近年は大動脈反射波に注目しその臨床的意義を考察している。大動脈への手術操作術後で、その反射波が左室に及ぼす軽微な影響を考察し、それが小児の長い長い術後人生においてリスク要因となる危惧を述べる。
心機能を全身の血行動態の中で捉え、その解析から病態の本質を抽出し、短期的視点でなく発達~生涯心臓病学の視点から適切に継続的に対応することが、患者のより良き人生に寄与する。