The 52st Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Legend Lecture

Legend Lecture3(LL03)
明日の小児循環器学を担う君たちへ 心エコーが小児循環器医療に果たしてきた役割

Fri. Jul 8, 2016 11:10 AM - 11:55 AM 第A会場 (天空 A)

座長:
安河内 聰(長野県立こども病院循環器センター )

LL03-01

11:10 AM - 11:55 AM

[LL03-01] 明日の小児循環器学を担う君たちへ心エコーが小児循環器医療に果たしてきた役割

里見 元義 (さとみクリニック)

明日の小児循環器学を担う君たちへ
心エコーが小児循環器医療に果たしてきた役割 

半生を心エコー進歩の歴史の渦中に身を置いたひとりとして、本Lectureを命ぜられたことはこの上ない光栄である。
  心エコー図はソナーや魚群探知機と同じ原理を、カラードプラはレーダー技術のMTI を、またSpeckle Tracking は、軍事技術の標的ロックオンと同様の技術を応用している。音速に基づくフレームレートの限界に直面した時には、心エコー法の限界を実感したこともあったが、技術者はparallel receive beamformingという新発想で乗り超えた。今ではシネアンジオグラフィーよりはるかに高い時間分解能を得ることに成功した。この技術的進歩はリアルタイム3Dエコーへと発展する際にも大いに貢献している。診断装置としての発展には臨床家が要望し、技術者が解決して乗り越えることの繰り返しが行われた。
  これらの技術的発展の段階に応じて、シングルビームMモードでは、弁の位置を知ることにより新生児の大血管転位症を診断することに貢献した。4つの弁の間をスキャンすることにより種々の疾患の診断の補助となった。断層エコーが導入されると、総動脈幹症を含めて大血管の立体的位置関係を正確に診断できるようになった。それまで剖検か心血管造影が必要とされた先天性心疾患の区分診断法に断層心エコー法を応用することにより非侵襲的に正確に行うことができるようになった。カラードプラエコーが導入されると総肺静脈還流異常症の正確な診断が可能となり、救命率向上に貢献した。連続波ドプラを用いることにより圧情報を加えることができるようになった。3Dエコーは心内形態をそのまま表示することにより手術計画の立案に貢献した。解像度とフレームレートの向上とともに、出生前診断が普及し、疾患の全体像が把握できるようになり出生後の変化を予測して医療を行う前方視的医療に貢献している。
   いくつもの限界とも思われる局面を打開して発展を遂げてきた技術者と臨床家たちの英知と努力を目の当たりにして、その一部でも伝えることができれば幸いである。