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[MIS01-04] ヒトiPS細胞由来心筋細胞の電気生理学解析
[背景]心臓の電気生理学的研究、不整脈研究は従来ヒト以外の生物種を用いるか、ヒトイオンチャネル遺伝子を心筋以外の細胞株に発現させて行われてきたが、これらの方法はヒト心筋細胞とは異なる環境下での検討であることが課題として指摘されてきた。ヒトiPS細胞から誘導した心筋細胞の樹立により、この問題の克服が期待される。LQTをはじめとする不整脈のモデルとしてiPS細胞を応用した報告が散見される。[目的]正常のヒトiPS細胞細胞から分化誘導した心筋細胞をパッチクランプ法により電気生理学的特性を検討し、その応用性を検討すること。[方法]健常者のヒトiPS細胞から心臓細胞へ分化誘導された10日目の拍動した細胞塊を酵素処理により単細胞に分離し、ガラスカバーの上でさらに7日培養したのちパッチクランプ法により各種電流を測定した。[結果]内向き電流としてL型Ca2+電流、Na+電流を記録した。それぞれの電流密度は8.6pA/pF、120pA/pFと比較的大きなものであった。一方、外向き電流として一過性外向き電流が記録されたが、その電流密度は正常ヒト心筋細胞または他の動物種と比較し著しく小さいものであった。交感神経アゴニストのイソプロテレノールならびに、副交感神経アゴニストのカルバコールに対するCa2+電流の応答は非常に良好であった。[まとめ]現時点で検討したチャネル電流は限られているが、ヒトiPS細胞から分化誘導した心筋細胞は正常ヒト心筋細胞の特性を獲得している可能性が示唆された。しかし発現しているイオンチャネルの中には一過性外向き電流のように電流の小さなものも見られた。また、細胞塊には結節型、心房型、心室型が混在している可能性もあり今後のさらなる検討が必要である。