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[P02-05] 心室中隔欠損症の閉鎖術を行った軟骨無形成症の1例
キーワード:軟骨無形成症、心室中隔欠損症、開心術
【背景】軟骨無形成症 (Achondroplasia:ACH) は四肢短縮型の低身長を呈する骨系統疾患であり、15,000-20,000人に1人の発症頻度である。先天性心疾患の合併は稀で、本邦では開心術の報告はない。海外での報告も散見する程度であり、心疾患の手術のリスクは不明である。【症例】13歳女児、出生直後にVSD (perimembranous outlet) 、ACHの診断となった。4歳5か月時に心臓カテーテル検査を施行し、Qp / Qs = 1.67, 肺動脈圧 35/19 (22) mmHgであったが、心不全症状なく手術のリスクも不明であり経過観察としていた。今回、家族の希望があり13歳で手術の方針となった。術前の心臓カテーテル検査では、Qp / Qs = 1.16, 肺動脈圧 31/16 (21) mmHg、RCCPの所見を認めたが、家族と再度相談の上で手術を決定した。ACHの身体的特徴から、全身麻酔の導入時に経口ファイバー挿管にて愛護的に気道確保を行った。手術は胸骨正中切開によりVSDパッチ閉鎖術を施行した。術後経過は順調で術後1日でICUを離床し、術後4日に退院とした。合併症はなく、創部・胸骨の治癒も順調であった。【考案・まとめ】ACHは大後頭孔狭窄、顔面中央部低形成や咽頭部狭窄などを合併する。さらに脊柱変形の合併や胸郭低形成の傾向があり、これらは全身麻酔や開心術のリスクと考えられる。ACHの患者に心臓手術を施行した従来の報告では、ダウン症を合併した死亡症例を除き、ASD閉鎖術の小児例やバイパス手術・弁置換術の成人例など、いずれも術後は問題なく経過している。本症例はACHの患者に対する開胸術・開心術のリスクが不明であり、また心不全症状がないことから手術せず経過観察としていた。しかし家族の希望により手術の検討を行い、明らかな気道や胸郭の病変が無いため手術は可能と判断し、手術・術後経過は順調であった。心臓手術が必要なACHの患者では、合併症についての検討が必要だが、比較的安全に手術が可能であると考えられた。