第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

胎児心臓病学2

ポスターセッション(P06)
胎児心臓病学2

2016年7月7日(木) 18:00 〜 19:00 ポスター会場 (天空 ノース)

座長:
渡辺 健(田附興風会医学研究所北野病院 小児科)

P06-01~P06-05

18:00 〜 19:00

[P06-05] 胎児診断のピットホールから学んだこと:TAPVD1aの1例

川滝 元良1,2, 金 基成3 (1.東北大学 産婦人科, 2.神奈川県立こども医療センター 新生児科, 3.神奈川県立こども医療センター 小児循環器科)

キーワード:TAPVD、胎児診断、入射角

重症心疾患の胎児診断率は上昇している。しかし、単独の総肺静脈還流異常(TAPVD)は、胎児診断率が非常に低い。今回我々は、胎児診断できなかった単独のTAPVD1aを経験した。症例は、36週で、軽度左室低形成を主訴に紹介された。PLSVCはあるものの他に心形態異常を指摘できないため、1回のみの胎児心エコーで前医に戻した。約半年後、TAPVD1aの術後の高度肺静脈狭窄のため当院のsecond opinion外来を受診され、それを契機に当院での胎児診断の見逃しが判明した。保存されていた動画像を見直し以下のようなピットホールを認識した。1)心尖部は側方を向く断面しか観察されていなかった(共通肺静脈腔と超音波の入射角がほぼ0度)。2)冠状静脈洞拡大はなく、無名静脈と右上大静脈が拡大し、垂直静脈と右上大静脈の血流方向は逆であった。3)低速のカラーあるいは方向性のあるパワードプラーを使用していなかった。当院ではこれまで13例の単独のTAPVD(1a 型2 例、1b 型5例、 3型 6例と、20例の単独のPLSVCを胎児診断している。1)の所見は2例のTAPVD1a型に共通して認められたが、PLSVCでは認めなかった。13例のTAPVDを見直したところ、共通肺静脈と超音波の入射角が15°以内の場合、共通肺静脈腔と心房の間の隔壁が全く描出できないことが分かった。Lateral four chamber viewは断層エコーでもカラードプラーでも胎児スクリーニングでは多用される断面であるが、TAPVDだけはこの方向を避けるべきであること、肺静脈血流の描出には低速のカラーまたは方向性のあるパワードプラーが必須であること、2回以上の胎児心エコーで判断すべきことを再認識した【結語】今回の経験は胎児診断を行う多くの方々と共有すべきピットホールと考える。