18:00 〜 19:00
[P16-03] PA/VSD/MAPCAにおける自己心膜による中心肺動脈再建後の血流動態シミュレーション~中心肺動脈の形態変化・内膜変性のリスク因子を探る~
キーワード:CFD、MAPCA、central PA
【背景】当科では中心肺動脈(cPA)欠損/高度低形成を伴うPA/VSD/MAPCAに対し段階的手術として一期的肺動脈統合術+姑息的右室流出路再建+cPA再建(自己心膜による拡大形成、もしくは心膜ロール)を先行した治療戦略を用いている。心膜は自己組織であり成長が期待できるが、瘢痕化や瘤化などの問題も残る。しかし、心膜変形をきたすリスク因子に関しては詳細には知られていない。【目的】再建後のcPAに対し、血流がもたらす力学的なストレスが自己心膜で再建されたcPAの形態変化に及ぼす影響について患者特異モデルでの血流シミュレーションを行い、個々の症例で検討する。【方法】2症例で段階的手術直後と根治術前に造影CTを撮影し検討した。症例1は1歳2ヶ月時に段階的手術(心膜ロールでのcPA再建)、13ヶ月後に根治術を施行した。症例2は1歳時に段階的手術(心膜パッチでのcPA拡大形成)、12ヶ月後に根治術を施行した。造影CTを元に3次元肺動脈形状を抽出し、心臓超音波検査から右室流出路流量波形を、カテーテル検査での肺動脈圧波形から末梢肺動脈での反射波を再現し、有限体積法を用いて流体解析を行い、血管慣性力を加味した拍動流を解析した。【結果】症例1では右肺動脈内で血流の剥離が発生し、wall shear stressの変動であるOSI (oscillatory shear index)が同部位で高値となり、根治術前に著名な拡大を認めた。右室流出路に対して右肺動脈が急峻な角度である事が一因と思われた。一方、症例2では心膜内での血流の剥離は認めず、OSIは全体に低値で、根治術まで肺動脈の形態が維持された。左右肺動脈の分岐角度の差が小さく、右肺動脈分岐直後に右下葉枝が吻合されていた。【結語】血流シミュレーションはcPA内での詳細な血流及び内膜にかかる力学的ストレスを明らかにし、変性に関わる因子を抽出できる可能性が示唆された。cPAの右室流出路からの分岐角度、末梢肺動脈の吻合部位は血流に影響していると考えられた。