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[P17-06] Tissue tricuspid annular displacement (TTAD)を用いたアントラサイクリン系薬剤誘発性右室心筋障害の評価
キーワード:右心機能、薬剤性心機能障害、心臓超音波検査
【背景】小児悪性腫瘍患者に使用されるアントラサイクリン系薬剤による心毒性に関する検討は左心室に限られており、同薬剤による右室心筋に対する心毒性の検討は希少である。近年、2D speckle tracking(2D-ST)法を用いた組織運動弁輪変位(TMAD)は、角度非依存性に心室長軸方向の心機能評価が可能である。TMADを三尖弁輪に応用したTissue tricuspid annular displacement (TTAD)は、右室心機能評価に適した指標と考えられている。【目的】TTADを始めとする右心機能を表すパラメータを用いて、アントラサイクリン系薬剤による右室心筋障害を評価する。【対象】アントラサイクリン系薬剤使用患児(A群) 18名、正常小児(N群) 13名。【方法】TTAD解析には、Philips社製QLABを使用し、心尖部四腔断面像より2D-ST法を用いて心尖部外膜側に支点を置き、心室中隔側および側壁側の三尖弁輪部をトラッキングすることでTTADを求めた。右心機能評価として、tricuspid annular plane systolic excursion (TAPSE), fractional area change (FAC), 組織Doppler法、global longitudinal strain (LS)を測定し、両群間で比較検討した。また、BNPと各右心機能パラメータの相関関係を検討した。【結果】TTADはA群で低下している傾向を認めた(A群 19.9±4.4%, N群22.4±3.3%, p=0.1)。TAPSE (SD) (A群 -1.2±1.6SD, N群0.4±2.1SD, p<0.05),およびglobal LS (A群 -18.2±4.8%, N群 -22.1±3.8%, p<0.05)は、A群で有意に低下していた。その他の右心機能パラメータは両群間で有意差はなかった。TTADはBNPと強い相関関係を認めたが (r= -0.79, p<0.001)、他の右心機能パラメータとBNPの間に有意な相関関係は認めなかった。【結語】アントラサイクリン系薬剤を使用した小児悪性腫瘍患者では、長軸方向における右室収縮能が正常群と比較して低下していた。アントラサイクリン系薬剤による右心機能障害の評価にTTADは有用であった。