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[P24-02] WPW型心電図を呈する副伝導路の早期興奮による左室収縮同期不全にフレカイニドが著効した一例
Keywords:WPW症候群、心室同期不全、フレカイニド
【背景】WPW型心電図を呈する症例における心機能低下の原因は、上室性頻拍による頻脈誘発性心筋症がよく知られているが、一方で、上室性頻拍を伴わず、副伝導路の早期興奮による心室同期不全が心機能低下の原因となっている症例も報告される。そのような症例には副伝導路に対するカテーテルアブレーションや抗不整脈薬が有効と考えられるが、小児において実際にこれらの治療が奏功したという報告は少ない。【症例】5ヶ月の男児。妊娠分娩経過に異常なく、正期産で出生。4ヶ月健診で心雑音を指摘されて紹介受診した。哺乳・体重増加とも問題はなかったが、多呼吸と軽度の陥没呼吸、啼泣時の発汗を認めた。胸部レントゲン上心拡大、安静12誘導心電図でWPW型心電図、心臓超音波検査で左室内収縮同期不全を伴う心機能低下(LVEF 40%)を認めた。心機能低下の原因として頻拍誘発性心筋症・冠動脈疾患などの二次性心筋症や特発性心筋症等考えられたが、経過、検査所見よりいずれも否定的であった。副伝導路の早期興奮による左室内同期不全を念頭に、心電図、心臓超音波検査モニタリング下にフレカイニド経静脈投与を行ったところ、心電図上δ波が消失し、心臓超音波検査でも左室内同期不全が改善した。この結果を受けてフレカイニド内服を導入、δ波が出現しない血中濃度を維持するよう内服量の調整を行いながら経過観察を続け、治療開始後6ヶ月で心機能の正常化を確認した。【考察】上室性頻拍を伴わないWPW型心電図で、左室内同期不全が明らかな場合、副伝導路の伝導遅延を目的とした抗不整脈薬投与が有効である可能性がある。低心機能ではあったが、慎重なモニタリングを行うことによりフレカイニドを安全に使用でき、期待した効果を得ることができた。本症例のように低年齢でカテーテルアブレーションが容易でない場合に、フレカイニドによる副伝導路抑制は治療の選択肢となり得る。