ポスターセッション（P37）
心不全・心移植1

[P37-01] Fontan術後患者の拡張能低下の原因と弊害

^○浜道 裕二, 加藤 昭生, 松井 拓也, 正谷 憲宏, 齋藤 美香, 石井 卓, 稲毛 章郎, 中本 祐樹, 上田 知実, 矢崎 諭, 嘉川 忠博 (榊原記念病院 循環器小児科)

Keywords:Fontan、拡張能低下、肺循環

【背景】Fontan患者の拡張能低下の原因は確定していない。また、Fontan術後患者では、拡張能低下により肺循環が妨げられ弊害が生じることが予想される。【目的】Fontan患者における拡張能低下の原因及び弊害について検討した。【方法】対象はFontanに到達し、2010～2015年に血行動態を把握するために心臓カテーテル検査を施行した217例。カテ年齢は1.7～42.9歳（中央値6.8歳）。心室の拡張末期圧（EDP）が13mmHg以上を拡張能低下と定義し、拡張能低下に関与する因子及び拡張能低下に影響される因子を求めた。【結果】多変量解析で拡張能低下に関与したのは、心室収縮末期圧（≧108mmHg、オッズ比15.6倍）、心室拡張末期容積（≧123ml/m2、8.1倍）、Fontan年齢（≧8.4歳、3.3倍）の3因子。単解析では更にカテ年齢（≧24歳）、Fontanからカテまでの期間（≧16.0年）、大動脈収縮期圧（≧111mmHg）、心室収縮末期容積（≧56ml/m2）、房室弁逆流（II度以上）の5因子。これら8因子の拡張能低下への説明係数は49%であった。拡張能低下群では有意に、肺動脈楔入圧（13.0 vs. 6.6mmHg）、中心静脈圧は上昇し、肺動脈駆動圧（3.6 vs. 5.2mmHg, p=0.0132）、大動脈酸素飽和度（87% vs. 92%）は低下していた。心拍出量の低下は認めなかった。拡張能低下群では肝機能を示す指標として、有意に総ビリルビンは上昇し、総蛋白、アルブミン値は低下していた。【結語】Fontan術後の拡張能低下に、体血圧の上昇、加齢、心機能低下、長いチアノーゼ期間が関与している可能性がある。拡張能低下により中心静脈圧が上昇し、肝機能低下を来していた。また拡張能低下により心拍出量は低下していなかったが、肺動脈駆動圧の低下、酸素飽和度の低下を来しており、これらが更に拡張能低下を惹起する可能性があるかも知れない。