The 52st Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

ポスターセッション

心不全・心移植1

ポスターセッション(P37)
心不全・心移植1

Thu. Jul 7, 2016 6:00 PM - 7:00 PM ポスター会場 (天空 ノース)

座長:
城戸 佐知子(兵庫県立こども病院 循環器内科)

P37-01~P37-05

6:00 PM - 7:00 PM

[P37-04] TCPC術後の体心室機能低下、房室弁逆流に伴う重症心不全に対して心臓移植登録を行った一例

藤野 剛雄1, 坂本 一郎1, 山村 健一郎2, 肥後 太基1, 田ノ上 禎久3, 井手 友美1 (1.九州大学病院 循環器内科, 2.九州大学病院 小児科, 3.九州大学病院 心臓血管外科)

Keywords:TCPC、心不全、心臓移植

症例は13歳の女児。右室型単心室、単心房、右胸心、無脾症にて、9ヶ月時に両方向性Glenn手術、4歳時にTCPC(EC法)を施行された。TCPC直後の心エコー検査で駆出率63%と心収縮は良好であったが、その後徐々に低下した。心不全治療を強化されるも8歳頃より心不全入院を繰り返した。最大限の内科的治療でも心不全コントロールが困難で静注強心薬を必要とするようになり、心臓移植を検討され当院を紹介となった。
入院時、NYHA IVで夜間発作性呼吸困難を認めた。BNP 386.7 pg/mlと上昇していた。総ビリルビン2.2 mg/dlと肝機能障害があり、造影CTでは肝内に多発する結節を認めた。心臓カテーテル検査で下大静脈・上大静脈圧18 mmHg、平均肺動脈圧14 mmHgと上昇しており、混合静脈血酸素飽和度38.7%、心係数1.26 L/min/m2と著明な低心拍出であった。TCPC経路に狭窄はなく、肺血管抵抗1.49 w.u.と低値であった。体心室造影では駆出率29%と低下し、IV度の房室弁逆流を認めた。ミルリノンおよびドブタミン持続静注を開始し、自覚症状は改善しBNPは低下した。心臓移植登録に際し肝機能の可逆性が焦点となったが、肝生検を施行し肝硬変の所見を認めず、また長期に強心薬投与を続けて徐々に肝機能が改善したため心臓移植登録に至った。現在心臓移植待機中である。
いわゆる’Failing Fontan’の病態は様々であるが、本症例のように体心室機能低下が本質である場合、心臓移植が治療選択肢となりうる。心臓移植登録においては他臓器障害の合併、特に肝障害が問題となる。Fontan循環症例の肝障害は画像的に評価が困難とされ、積極的に肝生検を施行する、あるいは強心薬による血行動態改善の反応を見るなど、肝機能の可逆性は慎重に評価されるべきと考えられる。
国内でのFontan循環に対する心臓移植登録例は知り得る限りこれまで無く、今後同様の症例に対して心臓移植の可能性を提示しうる貴重な症例である。考察を含め報告する。