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[P38-04] 治療に難渋した劣性栄養障害型先天性表皮水疱症に合併する拡張型心筋症の一例
Keywords:先天性表皮水疱症、拡張型心筋症、心不全
【背景】劣性栄養障害型先天性表皮水疱症(RDEB)は、皮膚びらんからの出血、組織液喪失が絶え間なく持続し、貧血や低栄養状態、易感染性が大きな問題となる予後不良の疾患である。今回我々は、RDEBに伴う拡張型心筋症(DCM)を発症し、重症心不全治療に難渋した一例を経験した。【症例】10歳女児.出生時にRDEBと診断され、皮膚科で加療されていた。7才時に易疲労感を主訴に小児科を受診し、重症貧血(Hb1.8g/dl)、DCM(LVEF18%、LVDd 152%N、BNP296pg/ml)に気付かれた。重度の低栄養状態を伴っており、輸血、胃管留置による経腸栄養剤投与、微量元素・カルニチン補充、心不全治療(利尿剤、βブロッカー、ACEi、ジゴキシン)、生食浴による皮膚の保清につとめたところ、半年後には全身状態の改善とともにEFは48%まで改善し、在宅管理が可能となった。その後、月に一度の輸血を行いながら慎重にフォローしたが、脱水や感染症を繰り返し、2年間の間に4回ショック状態となり腎前性腎不全のため透析を要した。βブロッカー、ACEiはその降圧効果からショック状態の増悪因子となり、少量のβブロッカーのみに減量せざるを得なかった。9歳時、EFは再び20%まで低下したが、必須脂肪酸の積極的な補充を行ったところ皮膚所見が大幅に改善し、旅行が可能になるなど、QOLを保つことができた。しかし10歳時、A群溶連菌による敗血症のため急変し、蘇生処置を行うも反応せず永眠した.【考察】RDEBに伴うDCMの原因は、低栄養に伴うセレンやカルニチンの欠乏、貧血、慢性炎症などが考えられている。本症例ではこれらの改善によりいったん心機能の回復が得られたが、より早期からの予防が重要であったと考える。また、心不全治療においては、血行動態が不安定であることから、内服薬の投与も極めて慎重に行う必要があった。