第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

術後遠隔期・合併症・発達6

ポスターセッション(P46)
術後遠隔期・合併症・発達6

2016年7月8日(金) 13:50 〜 14:40 ポスター会場 (天空 ノース)

座長:
上田 秀明(神奈川県立こども医療センター 循環器科)

P46-01~P46-06

13:50 〜 14:40

[P46-01] 片肺TCPCを施行した三尖弁閉鎖症の1例

古川 岳史1, 田中 登1, 中村 明日香1, 福永 英生1, 大槻 将弘1, 高橋 健1, 稀代 雅彦1, 中西 啓介2, 川崎 志保理2, 清水 俊明1 (1.順天堂大学 小児科, 2.順天堂大学 心臓血管外科)

キーワード:片肺TCPC、三尖弁閉鎖症、予後

【背景】機能的単心室症例における肺血管床の発達はきめて重要である。近年片肺フォンタン手術の報告を散見するが長期予後は不明である。今回我々は三尖弁閉鎖症に対する右片肺フォンタン手術を施行した症例を経験した。【症例】1歳2か月女児、胎児診断にて三尖弁閉鎖症(TA)疑い、生後TA IIcの診断となった。日齢27に肺動脈絞扼術を施行、6か月時にDKS吻合, ASD拡大術, BDG手術を施行したが、術中に左肺動脈の損傷をきたし、肺動脈形成術を追加で行った。11か月時に心臓カテーテル検査を施行し、左肺動脈形成を行った部分が完全閉塞しており、左肺動脈は側副血管により血流を維持されていたが狭小化を認めた。右肺動脈圧は9mmHg、左肺静脈楔入圧は9mmHg、PA index (右肺動脈) = 99.2 mm2/m2であった。肺動脈形成術とTCPCの方針としたが、肺動脈の形成が困難な場合は左肺動脈にshuntも考慮していた。1歳2か月時に手術を施行したが、正中切開で左肺動脈は閉鎖・索状となり同定できず、肺動脈形成は不可能と判断し16mm Gore-Texにて右片肺TCPCを施行した。ICU入室時にCVP 8-10mmHgで、術後5時間で抜管、術後1日でICU離床、術後3日でドレーン抜去、術後12日で退院となった。最終CVPは9mmHg、酸素飽和度は94%であった。現在は術後6か月経過し、全身状態・発育は良好に経過している。【考案・まとめ】本症例は肺動脈形成術が不可能であったため片肺TCPCを施行したが、フォンタン循環は成立し、両肺に対するTCPCと比べ遜色はない経過である。一方、側副血管により血流が維持されている左肺動脈が現在のところ残存しており、今後この左肺動脈に対するシャント手術、その後成長を待った後に両肺TCPCを成立できる可能性は残されている。片肺フォンタン術後で良好な経過の報告はあるが、長期的な予後は未だに不明である。本症例は、現時点では両肺TCPCに向かう更なる手術を予定していないが、今後の方針については検討を要する。