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[P53-02] 成人先天性心疾患患者におけるカルニチンの臨床的意義
Keywords:成人先天性心疾患、心不全、カルニチン
【背景・目的】カルニチン(CA)はβ酸化によるエネルギー代謝に重要な役割を担っており、心筋エネルギー代謝を考える上で重要である。成人先天性心疾患患者におけるカルニチン動態に関しての検討と、血行動態との関連を検討する。【対象・方法】2015年にカテーテル検査を行った10歳以上の先天性心疾術後患者を後方視的に検討した。CA分画(遊離カルニチン;free CA、アシルカルニチン;acyl CA)と血液検査、血行動態指標、水分量・筋肉量、6分間歩行距離に関してSpearmannの順位相関を用い相関関係を検討した。【結果】対象患者は84名(男38、女46)で28±12歳であった。Fontan循環44名、二心室修復40名。NYHA分類はI: 24名、II: 59名、III:1名であった。free CA 51.4±11μmol/L、acyl CA 10.2±3.5μmol/Lといずれも血中濃度は正常範囲内で、性差は認めなかった。free CAはヘモグロビンと正の相関を認め (ρ=0.40, p<0.0001)、acyl CAは心係数に有意な負の相関(ρ=-0.47, p<0.0001)を認めた。【考察】血中CA濃度は正常範囲内に留まったが、心係数や貧血の程度と強い相関関係がみられたことから、血中CAは細胞内のCA動態を間接的に反映しうると考えられた。free CAは赤血球寿命に関与しているとされており、カルニチン補充療法は成人先天性心疾患患者においても貧血の治療の選択肢となりうると考えられた。acyl CAは組織低還流の結果を反映し、細胞外に放出されることによりアシル基の細胞毒性を回避しているものと思われる。【結論】先天性心疾患術後患者においてカルニチン分画は貧血や心不全の病勢を反映するバイオマーカーとして利用できる可能性がある。