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[P56-05] 先天性心疾患開心術後症例の肺移植問題点
Keywords:生体肺移植、肺高血圧、大血管転位
近年移植医療の発展により、小児に対する肺移植症例も年々増加してきている。その原疾患の多くは化学療法後の肺障害であるが、その適応の拡大により、今後は心疾患を合併した肺障害、肺高血圧症例の増加が見込まれる。今回、大血管転位術後肺高血圧合併症例の肺移植を通じて、開心術後肺移植の新たな問題点の一部が明らかとなったのでここに報告する。症例は12歳女児。出生児に大血管転位III型と診断されたが、肺動脈狭窄が軽度であり、1歳4か月時に肺動脈絞扼術、心房中隔欠損作成術を施行された。その後2歳4か月時にJatene術、心房心室中隔欠損閉鎖術を施行されたが肺高血圧が残存し、肺高血圧治療を開始された。種々の肺高血圧治療にもかかわらず、肺高血圧による右心不全が進行。またNYHA IVとなり、内科的治療が限界であったために肺移植施行について検討した。以前の開胸手術による胸腔内癒着や右心不全とそれによる肝脾腫、引き続く汎血球減少が議論となったが、胸腔内癒着の問題以外は肺移植後の改善が見込まれること、肺移植検討時の身長は125.9cmで両親からの両肺葉移植では患児の胸腔におさまらないと予想され,片肺葉移植で救命可能と判断した。20XX年11月に父親右下葉を右胸腔内に移植した。人工心肺は一旦離脱し得たが、縦隔の可動性が予想外に乏しく、移植肺葉が右胸腔内に入りきらず無機能肺となった。救命的に1か月後、母親左下葉を左胸腔内に移植したが状態改善せず、更に頻回の胸腔内血腫除去術が必要であり、移植4か月後に術後からのECMO離脱できないまま永眠された。今回の症例は、胸腔内癒着は強くなかったが、縦隔の可動性低下が予測以上であった。今後増加する可能性がある心疾患合併肺移植の適応基準について更なる検討や基準が必要であると考えられた。