第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患5

ポスターセッション(P58)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患5

2016年7月7日(木) 18:00 〜 19:00 ポスター会場 (天空 ノース)

座長:南 高臣(自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児科)

P58-01~P58-05

18:00 〜 19:00

[P58-01] 重度肺高血圧を合併した新生児期発症先天性血栓性血小板減少性紫斑病(USS: Upshaw-Schulman症候群)の1例

辻井 信之1,2, 羽山 陽介2, 黒嵜 健一2, 白石 公2, 吉澤 弘行1, 嶋 緑倫1 (1.奈良県立医科大学 小児科, 2.国立循環器病研究センター病院 小児循環器科)

キーワード:肺高血圧、新生児、血栓性血小板減少性紫斑病

【はじめに】先天性血栓性血小板減少性紫斑病(USS: Upshaw-Schulman症候群)は、慢性的な血小板減少および溶血性貧血を呈し、定期的な新鮮凍結血漿(FFP)の輸注を必要とする重篤かつ稀な疾患である。典型例では新生児期に重症黄疸で発症し交換輸血を必要とするが、肺高血圧を合併した症例の報告はない。今回、重度肺高血圧を合併した新生児期発症USSを経験したので報告する。【症例】日齢0から黄疸とチアノーゼを認め、日齢1に近医へ搬送、大動脈縮窄を否定できず同日に小児循環器専門施設へ転院。重度肺高血圧、右室拡大、中等度三尖弁逆流を認めたが、大動脈縮窄は否定的であった。入院時採血でT-bil 22.4 mg/dlをはじめとする強い血管内溶血所見があり、血小板は3000 /μl、破砕赤血球を多数認めた。血尿、腎機能障害、紫斑及び発熱が出現しUSSを疑った。酸素投与に加え、交換輸血及びFFP輸注を行い、血小板は次第に増加、血尿、腎機能障害、紫斑、発熱及び血管内溶血所見は改善。肺高血圧の改善傾向を得て、血液凝固専門施設へ転院した。後日、ELISAでvon Willebrand因子特異的切断酵素(ADAMTS13)活性は0.5%以下、抗ADAMTS13抗体価は0.9Bethesda単位/mlであり、USSと診断した。両親のADAMTS13活性は41.5%、42.6%であり、患児の遺伝子検査では新規変異を伴っていた。現在、FFPの定期投与を行っている。【考察・結語】USSによる微小血栓による肺塞栓、または血管内溶血による肺高血圧が考えられたが、新生児期であることから肺塞栓の診断には至らなかった。USSでは肺塞栓を含む肺合併症は稀と報告されており、血管内溶血により肺高血圧が引き起こされた可能性が高いと考えられた。新生児期発症USSには重度肺高血圧を伴う可能性があり、今後の症例の蓄積が待たれる。