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[P59-02] シルクフィブロインを基盤とした生分解性を有する心臓血管修復用パッチ材の開発(第3報)
キーワード:シルクフィブロイン、ポリエチレンカーボネート、人工パッチ
【背景・目的】小児心臓血管外科領域で使用する身体の伸長に応じて成長可能な手術用パッチの新規作成を目的に、シルクフィブロイン(SF)を基盤材料とした開発を行っている。これまでPTFEパッチに匹敵する物性の確保のため、SFに配合可能な合成高分子としてポリウレタンを選択し報告してきた。PTFEと同等の物性を持つ一方、埋植後のパッチの炎症性変化と分解性の問題から、ポリエチレンカーボネート(PEC)配合に変更した。このSF/PECパッチの特徴を報告する。【方法】家蚕から精錬により得たSFとPECを混合した溶液をエレクトロスピニング法で射出し、厚さ0.2~0.3mmのマイクロファイバー不織布パッチを作成、各種物性を評価した。ビーグル犬の下大静脈に本パッチを埋植し、一定期間後(1、3、6、12ヶ月)に犠牲死させ、パッチ埋植部を肉眼的及び組織学的に評価した。【結果】物性評価:PECの添加でSFの破断強度と伸展性は濃度依存的に改善した。透水試験はPTFEと同等であった。PTFE埋植時の著しい針孔出血はSF/PECでは生じなかった。摘出標本の評価:肉眼的-血液接触面は自己静脈に連続して平滑で、血管に狭窄は無かった。組織学的-血管側内膜の組織形成は良好。パッチに石灰化はなく、崩壊を示唆する断片化がみられた。一方パッチは肉芽組織でつつまれ、排除される傾向にあった。【考察・結語】SF/PEC複合化エレクトロスピニングパッチによる自己組織再生誘導は良好であった。一方でパッチの消褪と炎症惹起には課題が残っており、配合ポリマー種を変更し最適化を図っている。